うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

LSDと瞑想、「Sexy Sadie」と「Not Guilty」

ビートルズとインド」について、映画「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」を観たら、「LSDと瞑想」「ジョージとインド哲学」の話に分けて見る視点が強まった。
ジョンとポールとジョージのスタンスをマーブル状態にして「ビートルズのインド時代」とするから、ややこしい。


シンプルにLSDの歴史をWikipediaで見てみる。端的に拾ってロック周辺と重ねてみる。


1960年代初頭:アメリカではLSDが薬局に置かれていたりした
1962年:新薬だけど具体的な効果がはっきりしない、ってことで規制対象に
1963年:ティモシー・リアリー、チャード・アルパート(ハーバード大学両教授)が学生にLSDを与える実験で大学を追われる
1965年:アメリカでLSDの非合法な製造販売が軽犯罪扱いになる
1967年:ビートルズマハリシ超越瞑想へ傾倒。「ドラッグやめる」宣言
1969年:ウッドストック・フェスティバル。
1971年:イギリスでLSDが薬物乱用法においてクラスAになる


急に禁止されても無理じゃないかという気がしたりします。
チャード・アルパート氏の本は過去に紹介したことがあります(参考)。



「代替」として期待されたヨガと瞑想に話を戻します。
ビートルズ・ファンでも、ヨガに興味がなければ1967年〜68年あたりの話はわりと地味目なゾーンということで、マハリシが悪者にされて終わり、となりがち。その直後にヨーコさんが登場するから、日本人にはなおさら印象に残りにくい。
ここからの話は立ち位置をどこに置くかで書き方はいろいろなのだけど、ベースはヨガ・サイドから、でも「ジョンかっこいー、きゃー」という女子も少々同居したまま書くと、



 ジョンはクールなようで感情的で、
 ちょっと薄っぺらいようなひらひらとしたところもあって、
 でも捉えたことのアウトプットがおそろしく包括的。
 それが「動物的に本質を見極めるセンス」と捉えられたりして
 カリスマ・チックなのよね。声もずるい。



という感じで、(ちょっと女子は置いておくとして)ヨギ的にはジョンに人気がありすぎることもあり、このへんの「ひらひら」のことは少々書きにくい。
いつだって戦略的にいいものを取り込んでいくポールとは違った魅力が、そこだったりもする。


インターネットというのはすごいもので、今ではこういう時代の映像を見ることができる。
いろいろな映像があるのだけど、そんないろいろな映像をつないだ以下を見た。日本のパーツも混ざっているのでカタカナも登場する。

The Beatles in India 1968

それぞれのカワイ子ちゃんを連れて、ラムジュラの橋を渡るビートルズ、ガンガーと歌とビートルズ。パティ(ジョージの)もジェーン(ポールの)もカワイすぎるのだけど、中盤以降でミア・ファローにカメラの視線が集まっている。ジョンの曲「Sexy Sadie」ができるきっかけエピソードに出てくる女優さん。


これに対して、今日はジョージの「Not Guilty」という曲を紹介します。
発表されたのは1979年なんだけど書かれたのは1968年で、「Sexy Sadie」を書いたジョンに対する、ジョージの反論ソングのようでもある。

Not guilty
For getting in your way
While you're trying to steal the day
Not guilty
And I'm not here for the rest
I'm not trying to steal your vest
I am not trying to be smart
I only want what I can get
I'm really sorry for your ageing head
But like you heard me said
Not guilty


Not guilty
For being on your street
Getting underneath your feet
Not guilty
No use handing me a writ
While I'm trying to do my bit
I don't expect to take your heart ...
I only want what I can get
I'm really sorry that you're underfed ...
But like you heard me said ...
Not guilty


Not guilty
For looking like a freak
Making friends with every Sikh
Not guilty
For leading you astray
On the road to Mandalay
I won't upset the apple cart
I only want what I can get
I'm really sorry that you've been misled ...
But like you heard me said ...
Not guilty


ジョージ・ハリスン自伝」にある訳が、よい。特に3番がよい。

ぼくのせいじゃない
変わった奴に見えるからって
シーク教徒とみんな友だちになるからって
ぼくのせいじゃない
マンダレイへの道の途中で
君を迷わせるからって
アップルの荷車をひっくり返すつもりはない
自分の手に届くものが欲しいだけ
だまされたと感じてるのは本当にお気の毒だが
さっき きみも聞いたとおり
ぼくのせいじゃない

インドから戻るとき、車がパンクしたりのアクシデントでことごとく帰路をさえぎられたことや、アップルという荷車(ビートルズの会社)のこと、そして最後に「ぼくのせいじゃない」。ジョージのギリギリの心境。
映画を観るまではそうでもなかったのに、観た後はこの詩の世界が突き刺さる。



発表された順番があべこべなのでややこしいのだけど、ジョンはこの後プラスティック・オノ・バンド名義で1970年に「Instant Karma!」という曲を発表している。解散すんのか? しないのか? の頃。
ジョージは参加してる。ジョンのボーカルがめちゃくちゃにかっこいい。
ジョンとジョージの間にこの頃、どんなコミュニケーションがあったのだろう。
インスタント・カルマ。

Instant Karma's gonna get you
Gonna knock you right in the head
You better get yourself together
Pretty soon your gonna be dead


What in the world you thinking of?
Laughing in the face of love
What on Earth you try'na do?
It's up to you
Yeah, you


Instant Karma's gonna get you
Gonna hit you right in the face
You better get yourself together darling
Join the human race


How in the world you gonna see?
Laughing at fools like me
Who on Earth d'you think you are?
A superstar?
Well, right you are


And we all shine on
Like the moon and the stars and the sun
Well, we all shine on
Everyone, c'mon


Instant Karma's gonna get you
Gonna knock you off your feet
Better recognise your brothers
Everyone you meet


Why in the world are we here?
Surely not to live in pain and fear
Why on Earth are you there
When you're everywhere
Gonna get your share


Well, we all shine on
Like the moon and the stars and the sun
Yeah, we all shine on
C'mon and on and on, on, on


Yeah, yeah
Alright

詩の意訳解釈は無限大。これがジョンの才能なんだろうなぁ。


ここまでに紹介した曲とともに振り返ってみる。


 1968年、ジョン:マハリシはみんなを騙した(Sexy Sadie)
 1968年、ジョージ:ぼくのせいじゃない(Not Guilty)


  そして、


 1970年、ジョン:「Join the human race」(Instant Karma!)
 1971年、ジョン:「And no religion too」 (Imagine)



きっとこの頃、かれらのなかで素敵なことが起こっていたのだと思う。
オーバードースで多くのロック・ミュージシャンが去っていったこの時代に、瞑想へ向かったビートルズ
瞑想はそんなに真面目にやっていなかったんじゃないかなと思うのだけど(笑)。
ちなみにうちこは「Instant Karma!」については「Karma」よりも、「Instant」のほうにメッセージのウエイトがあるんじゃないかと思ってる。



 「いまやる。いいからやる。」


理由を求めて傾倒したり噛みついてみたりはしてみたものの、
結局「いまやるかやらないか」しかないみたい。
音楽も、瞑想も。
状況はみんな一緒だから、ひとまず仲良くやってみるか、と。



そんな心境のように見えます。
でもこのあとビートルズは解散しちゃうんだ。