えええええ、こんな話だったっけ?! と、ものすごい衝撃を受けました。
この話は子供の頃に読んで「苦しいです。サンタマリア。」というフレーズもしっかり覚えていました。
なのに、ものすごい衝撃。
それはわたしがオツベル側でもおかしくない年齢を越えたから。
いきなりやってきて無理やり自分の居場所を作らせ、じわじわテリトリーを広げていこうとするセンチメンタルな暴君。いまのわたしには「象」がそう見える。
所属意識や帰属意識、社会参画意識を満たすこと、精神的な充足感。これらは労働の対価にならないだろうか。
「正面玄関から入ってきてください」「エントリー・シートを提出してください」相手が話の通じる人間なら、間違いなくきっぱりそう言うところだ。だけど天下りの人だから、古参の関係者だから断るに断れない。ヤクザみたいなやり方でやってきた者に応対する、これは経営者の悲劇では?
この視点は、子供の頃にはなかったものです。
象よ。あなたは面接に臨む前に、自分がなにを求めていたのか考えたことがありましたか? 志望動機はどこでも聞かれる質問ですよ。
「自分はデカイぞ力があるぞ。しかも神聖だぞ」と、受け手を複雑な状況に陥れて困惑させる「白い象」という設定に、なんだか凝りすぎていやな話だと思いました。
あとでオラオラとデカい生き物たちがやってくる展開になったところで、複雑な気持ちが爆発しました。
オツベルにはオツベルの役割と義務があるなかで、状況の変化にあわせて無理やり多様性を実現しようとして、結局うまくいかなかった。やり手経営者の限界の見せ方として、"デカくて力があってしかも神聖で仲間も多い" という相手を持ってくるなんて。
宮沢賢治はすごいことをする。インドとイギリスの関係性の暗喩であることは、歴史を知っている人ならピンとくる。