驚くほどのおもしろさでした。あの短編をどうやって映画化したのだろうと思っていたら、原作どおりなのは後半から。前半は同じ原作者・林芙美子の小説『水仙』『白鷺』のマッシュアップで、魔法のような編集です。
映画では生活調度品や衣装・身なりで視覚的な格差表現が加わって、その効果が何倍にも膨らんでいます。
観る前は「晩菊の主演が杉村春子って、ちょっと意外」と思っていたのだけど、なるほどこういう流れに持っていくためだったのね!!!
と、観て納得しました。
酸いも甘いも味わい尽くして自立した中年女が
思わず漏らす「黄色い声」
すべてはこの瞬間のためにあった!!!
この「黄色」の発色を最大限に活かす挙動のスピード・コントロールが完璧です。
後半だけ急に原作通りになって、なんでここからいきなりモノローグがナレーションで入るの? という展開、そこからBGMのお琴の音の流れが変わっておきん(杉村春子)が黄色い声を出してキャピつく瞬間がとにかくピーク。
そこから田部(上原謙)が貧乏ゆすりをする仕草が映る。原作世界の再現方法が計算され尽くされていてたまりません。
こりゃあ、おもしろい!!!
一瞬『白鷺』の辛辣なラストと『晩菊』の夢のコラボみたいなシーン(有馬稲子×杉村春子の掛け合い)もあって、こんなにおもしろい映画ってある?!
『水仙』の気落ち悪さは映画のほうがさらに感じが出ていて、そこに『白鷺』の主人公が合流してくるなんて、まさかの展開。シティ・ハンターにキャッツアイ登場! くらいの豪華さ。
この映画は、この文庫を読むとさらに100倍楽しめます。
志村けん×柄本明の芸者コントはこの映画からインスパイアされているのですって。
ヨガでお会いするかたに教えてもらって、「なんで?」と思っていたのですが、納得(笑)。めちゃくちゃ納得。
おもしろすぎて頭がおかしくなるかと思いました。