1998年にアメリカで出版された世界的ベストセラー・ビジネス書を読んでみました。
付箋を貼ろうと思う間もなく読み終えてしまい、反応すべきところがすべてテロップで流れるバラエティ番組を見ているようでした。
これが売れたということは、背中を押してほしい人が多かったのかな。
この本が売れたのは、リーマショックの約10年前。これから多くのビジネスチャンスがテクノロジーとともに拡がっていくぜ! という時代。
文章を読んでいると、変化を恐れ嫌うマインドの掘り下がないままどんどん進み、「あいつは考えも行動も変えなかったけど、俺は変えたから生き残ったもんねー」という内面の見下しにギョッとします。もちろんそんな子供っぽい書き方ではなくポジティブ・コーティングを施されてはいるのだけど。
一方で、なるほどこのくらいわかりやすい立ち位置から煽る語りのほうが売れるのかと、勉強にもなったりして。ブックオフでよく見る(=売れた)本は、こういうスタンスで書かれたものが多いですもんね。
・・・と、なんとも言えぬ軽さにポカーンとつつ、ここ一年半で生活様式に大きな変化のあった今、読んでよかった本でもある。この本の作り手のマーケティング感覚を認めざるを得ない。
特に以下は、うまいこと言うなぁ、と思いながら読みました。
つねにチーズの匂いをかいでみること
そうすれば古くなったのに気がつく
チーズがもともと発酵・熟成されたものだからこそ、こういう表現がしやすいのよね……。
日本の文化は熟練の技術への評価を高く設定するから、原本の感じがうまくフィットしていない部分が多いのだろうなと思うのだけど、匂いをかぐという行為は観察のあり方としてスッと入ってきます。
ここのところ無執着を説く本ばかり読んでいたので、この物語に登場するキャラクターのわかりやすさが新鮮でした。