空海さんの熱量がすごい。読みながら、こんなトーンで説明しようとしていた時期があったんだ…という驚きがありました。「俺の密教」という勢い。
独立運動おじさんになる前に雄弁法律家であった頃のガンジーよのうなエネルギーを感じます。こういう情熱的な思いからはじまった思想の表現がゆくゆく変化していったと考えると、空海さんの思想を凝縮して読める本でもあります。
平安時代に龍樹の釈摩訶衍論にある五種類の言説を紹介していたり、この時代に既に各派の定義を説明しています。すごく具体的で鮮やかです。そのうえで、バラモン教その他の思想を否定もせず、各派の定義をひたすら掘り下げる。
この本のなかの空海さんは、現代のわたしの感覚から見てまったく日本のお坊さんに感じられない。世界を読んでいる人のよう。ありがたいことを教えてくれるお坊様というよりも、社会学者やコンサルタントのような印象を受ける。キレッキレの空海さんが本気を出すとこうなる、というような。
こういう書物を書いていた時期もあって、これほど熱いものを秘めつつ、日本の社会のなかでバッシングも受けながら教理を説こうとつとめていたのだなぁ。そんなことをしみじみ思いながら読みました。
空海「弁顕密二教論」 ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫)
- 作者: 空海,加藤精一
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
- 発売日: 2014/11/21
- メディア: 文庫
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