うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

君の膵臓をたべたい 住野よる 著

強く反抗も反応もしない。そういう対処法を選び取る心の変化のプロセスは実は大人も子ども関係なくて、だからこの交流はわたしのような思春期中年にも刺さる。この種の自己解放劇はきっと30年後、思春期老年になったわたしにも刺さる。これを「つまらん」という老人にはなっていたくない。

自分を他人に説明するのがこわいという気持ちを忘れずにいるというのは、わたしはとても大切なことと思っているのだけど、それを打破できないことを未熟としないと社会が回らない。そういう場面がたくさんある。
他人を別人格として尊重することを学んでいくプロセスは人それぞれで、わたしはやっとここ数年でこのことについて深く意識をするようになったくらいなので、この小説の登場人物たちよりもずっと遅い。
子どもを別人格として尊重することについても同様で、この小説では親たちが変に食い込んでくることがなく、そこに理想がある。とくに男の子の母親が実によい。この母親の態度が、ああこの人もかつて自分と戦ってきたんだな、折り合ってきたのだな、その自己分析に至ったことのある人なのだなと思わせる。ここがすごくいい。


 自分自身とすんなり仲良くできるか


この小説のテーマはバガヴァッド・ギーターの6章5節。そんな視点で読むことのできる小説でした。自分はもう汚れちまった大人だと思っている人にも、純粋さというのは "失う一方ではなく学びとっていくもの" ということに目を向けさせてくれる、そういう力を持った物語。
主要登場人物の三人が、トリグナの構造になっているからね。こりゃよくできとる。そらヒットもするわなと思いました。

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)