うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ヒップな生活革命 佐久間裕美子 著


夏に読んだ「ピンヒールははかない」がすごくよかったので、同じ著者のこの本も読んでみました。
あそこで買えば安かったとか損をしたといって不機嫌になっているより、こういう消費の方がメンタルにいい。確実にそう思う。というような事例集。

わたしは値段よりコミュニケーション・コストを考えたときに安い、という判断で決めることが年々多くなっているのだけど、自分の中にあるこういう気持ちの変化も、この本にあるような変化の根っこと似ているのかな。
今年はブルーボトルがネスレ傘下入りするというニュースがあって、この本が出版されて3年後にはこういう流れも起こるのかと少し流れが早く感じるけれど、この本ではリーマン・ブラザーズ破綻以降の流れをじっくり読めるのがよいです。

 この本の執筆は、普段から取材していることに、あらためて文脈を付けるという作業でした。どういう社会的背景の中で、アメリカの食が急においしくなり、クラフトブームが起きたのか、なぜ再びインディペンデントなものづくりが盛り上がっているのか。そうした文脈は、日本にムーブメントが輸入される過程で抜け落ちてしまいがちです。
(第4章 自分の場所を作る文化発信のチャンネル 日本の伝統的な文化がアメリカに与えた影響 より)

「インディペンデントなものづくり」は、日本で思い出す動きでは宿とか店にもあって、この本を読みながら描くブルックリンのイメージと重なったのは、2011年に京都で過ごしたときのゲストハウスとカレー屋さんでの時間
いまはベトナムのホテルやお店でも似たようなことを感じるのですが、ものすごくおしゃれなスモール・ブランドが楽しそうにやっている。


以下の「デビューの定型」の変化の話も、うなずく事例が日本でも増えていると感じます。

 かつて「ブランド」を作ろうとした場合、大きさに差はあれど、ひとつの「コレクション」として商品のラインを構築するというやり方が、デビューの定型として存在していました。しかし、インターネットで消費者との物理的距離が縮まり、個人が起業するためのツールが増えていることもあって、より気軽に単体のアイテムから出発するブランドが増えました。まず投資家や支援者を見つけ、借金を背負ってサンプルを作り、それをもとに注文を取って、前金を工場に払ってようやく商品を作る。こうした旧来のやり方に伴うリスクを嫌い、できるところから始める、という方法論が普及しつつあるのです。けれど、もっと注目すべきだと私が思うのは、自分の生き方をブランドに表現する人たちが増えているということです。
(第3章 足元を見つめ直してモノと付き合う 自分の生き方を表現するブランド より) 

インターネットで宣伝や告知の方法が変わったというのは、やっぱりすごく大きいこと。モノづくりだけでなく、音楽、お笑い、さまざまなエンタメ産業でも似たことを感じます。


わたしはヨガクラスや読書会を開催する会場を選ぶときに、割高でもこういう方針で運営している組織・人と関わりたいと思う場所が気がつくと多くなっていて、それは消えていったすてきなスタジオを思い出して「誰かが損をしている」という構造の中にある具体的な人の顔が浮かぶから。身近なところから意識の範囲が変わりました。こういうことと、この本に書かれていることは少し似ているように感じます。
アメリカのブラック・フライデーのことは全く知らなかったので、その売り上げの集中っぷりにおどろきました。日本でも、こういうスタイルの消費が気にならない人は気にならない。そこにある違いはなにかと考えたときに「罪悪感」という言葉も浮かぶけれど、「ヒップ」は、日本語では「民度(みんど)」という言葉に少し近いようにも見えました。


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