よいテキストだなぁと思いながら読みました。若者向けの本なのですが、内容としては「パラサイト・ミドルの衝撃」に似たところがあります。amazonにある著者からのコメントに、こんなフレーズがありました。
辛抱できないのは、若者に原因があるのですか?
違います。
自分のことで精いっぱいな私たち大人の責任です。
なので、大人のひとりとして、
若者に正しく伝えられていない
大人が教えられない本当に大切なことを
出来るだけわかりやすくお伝えしよう、
と挑戦してみました。
いま20代でなくても、Kindleを持っている人にはおすすめ。この本はKindleだと150円で、紙の本だと2000円以上。なんでだろ。
このテキストにはポイントとして
「無形バリュー」の創出・提供こそが、経営の勘どころ
ということが書かれていて、その少し前にある以下の説明が沁みます。
現在の日本社会は、本来は無形バリューで満たすべき高い次元の欲求を、無形バリューで満たす機会が社会的に十分に用意されていないため(社会が未成熟なため)、有形バリューで無理やり満たそうとしている、というのが実態ではないでしょうか。
わたしは自分も親もメディアによる物欲喚起インプットが激化する時代に身を置いたので、なんでこうなったかね…なんて思い返すことがあり、いま30歳くらいまでの若い人を見てかしこいなぁと思うことが多いです。
終盤でこのようなことも書かれています。
「デフレ型不況」をきっかけにして、いままで無形バリューを自ら提供することもなく、国家、職場、家庭に寄りかかって生きていた多くの日本人は、結局これらとは経済的な有形バリューでつながっているにすぎないことを思い知らされています。
(中略)
つまり、今の日本社会の沈滞感、虚無感は「デフレ型不況」が諸悪の原因ではないのです。バブル崩壊後の「デフレ型不況」をきっかけにして、この半世紀以上の間、先延ばししてきた問題が顕在化しているだけなのです。
第二次世界大戦後、ってことかな。
序盤で書かれている以下のことは、読む世代によってはあえて考えることを避けていたことかも。
- バリューを提供する会社は「仕組み」ですから、そこに感情はありません。感情レベルがあり、それに基いてかかわるかどうかを意志決定しているのは会社の利害関係者であり、その「かかわり」から成り立つ仕組みである会社そのものには、感情は存在しないのです。
- 「仕組み」の存続・成長のためには、「リストラ」をいざというときの非常手段として捉えるのではなく、日常的に行っていくべきマネージメント原則として理解しなくてはならないのです。もっと突っ込んで言えば、経営はリストラそのものでもある、ということなのです。
感情の所在は別のところで語られていて、それは「志」や「理念」のところ。
よく「いい人」などと同じトーンで「いい会社」という表現をする人がいるけど、この本はその感覚のヤバさに切り込んでいて、そこが「パラサイト・ミドルの衝撃」と似ています。
基本的に経営の仕組みの本なので、法則という側面に寄っていって最後はこのような展開に。
皆さんの肉体がいつか滅びるように、会社など仕組みの名前や形態も不滅ではありません。しかし、「志」「理念」は人間社会がある限り、時間・空間のなかで縦横につながる「かかわり」を通じ、時代を越えて引継がれていくものです。
こういうラストはトーンとして意外な印象を受けましたが、実際たまに注入しておくべきエキス。
自己啓発本よりはリアルだしバブル世代には耳の痛いことが書いてあって、現実的です。振り返りが苦手な日本人の性質について触れているところもあります。
20代の人には著者の想定どおりにたいへんおすすめなんだけど、30代のうちに読んだほうがよいタイプの本じゃないかな。
▼紙の本
▼Kindle版