日本の経済成長の歴史の説明がこれまでになくリアルに感じられる本。
親世代に近い人が書いている本なので、自分の親が20代〜40代の頃の日本がどんなムードであったかがよくわかる。あのピンとこないような贅沢な感じはなんだったのだろう、というのを振り返れる。
いまのわたしは「前年比が増えるわけがない仕事」を、そのままそのように扱える、演じなくてよい働き方をしているけれど、企業の中にいるとそうでなくなってしまうことがある、というのをよく知っている。「ありえない計算」を続けていくうちに、ありえなさをありえると思わせてくれる強いリーダーが欲しくなる。そういう流れを何度も見てきた。
この本は、その流れから個人に照らし合わせる思考に戻してくれる。
<132ページ ちいさな問題とおとなの関係について より>
英雄待望や、独裁者を生む素地は、「大きな」問題が力の強い指導者が現れれば解決可能だと短絡的に考えるところに生まれるのです。(中略)
「小商い」とはまさに、「ちいさな」問題を考える際に取りうる立ち位置から、ビジネスや、社会に関わるというころです。
このスタンスは、すごく重要。「ニュースサイトに実名でけしからんと意見する人に欠けているなにか」も、ここと繋がっていると思う。
<185ページ 遅れてきたものの責任 より>
自己責任、自己決定、そして自己実現というグローバリズムが推奨した個人倫理は、まさに地球がまだ誰にも支配されていなかったグローバルな弱肉強食の世界を生き抜く個人倫理でもありました。それはまた、個人の権利の一部を共同体に譲渡するところから始まる近代化というものが、個を発見することで、再び弱肉強食の世界を呼び寄せるという歴史の皮肉のようでもあります。
民主主義がグローバリズムを生んだのですが、グローバリズムが民主主義を滅ぼそうとしている光景に、わたしたちは立ち会っているといえるのかもしれません。
わたしは社会人になってから数年でネットにどっぷり入っていったのだけど、いまは「ああ、世界が繋がっちゃうと、こうなる」という感覚でいる。
<222ページ 目印としての小商い より>
なにかがわかるには、時間が必要なのです。
現在の多くのビジネスモデルは、基本的に時間を無視した、短期的な無時間モデルです。
わかるには、自分でナマナマしくリスクを負った経験での時間が必要だな、とよく思う。
いまいる場所で、譲渡から始まるフローを自分で組み立てていくということ。
数の原理として、いま自分の携わっているビジネスって計算おかしいよね…と思う人におすすめです。