うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

草枕 夏目漱石 著(再読)


お芝居を観に行くので1年半ぶりに再読しました。
初めて読んだときは、「こころ」の一部を国語の授業で記憶していた意外に夏目漱石小説を読んでおらず、いまは10作品ほど読んでからの再読です。
とくに「虞美人草」を読んでから読むと、この作品の那美さんのなかにある物質としての女性性の描かれ方の機微、巧妙さにおどろきます。人間関係が複雑すぎないので、それが際立つ。
ストーリーが淡いという印象を持つ人が多いと思うけど、あらためて読むと読書(朗読)中に地震が起こるシーンがすごくいい。「虞美人草」にも男女の読書のシーンが出てくるのだけど、それと比較するとおもしろい。雰囲気としては「高校教師」というドラマを思い出す。だからそれが淡いんだと言われたらそうなんだろうけど、淡いんじゃなくて、オトナ。


思想家としての漱石グルジによる読み手へのメッセージの出しかたも、「草枕」はアクセルとブレーキの配分が絶妙ですごく上品なのに、屁のくだりがおもしろすぎる。ここは何度読んでも「こんな表現の手法があったか!」と思うほどすごい。(前に書きました
この作品の翌年からグルジは新聞連載作家となり、大スターになるのだけど、それ以前以後の書き分けや庶民への降りていきかたのようなものを見ると、説明しすぎていない初期三部作(猫ちゃん坊っちゃん草枕)に込められたメッセージの濃さが際立つ。特にあの名前のない猫ちゃん、すごい。


夏目漱石作品のなかに出てくる女性のなかでは、門の御米ほど天使すぎず、三四郎の美禰子ほど都会風を吹かせない。那美さんやっぱり素敵だわ〜。
映像化するにしても、この女性は多くの要素を持ちつつバランス感覚のある人じゃないと演じるのがむずかしいだろうなぁと思っていたので、お芝居のほうも楽しみ。


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