うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

不変のマーケティング 神田昌典 著


ビジネス本も読まないとバランスの悪いこのごろなので、書店でいまいちばん売れてるっぽいマーケティング本を読んでみました。今日はせっかくなので、ヨガマーケットの人向けにこの本の感想を書きます。
著者さんの10年のノウハウを集約した本とのことで、読んでいると2005年ごろの楽天市場の成功店長になったような気分になる文体。それでもいま20代30代の男性はアツい気持ちで読めちゃう人がいるということがわかったりして、いろいろびっくりしております。



刺激的な言葉でビジネスでの成功を応援していくタイプの内容で、とにかく実践ノウハウがたくさん書かれています。商売哲学色は少ないけど、終盤のほうで語られる本音はおもしろい。「著者になりたい方へ…… "グル病" に注意!」なんて見出しのトピックもある。
ヨガのインストラクターをする人はこういうノリが苦手だと思うのですが、最近ヨガビジネスのセミナーが増えているようで、わたしの周囲にもそういうところへ行ってみたという感想を聞かせてくれる人がいます。そこでどんな話がされているのかはよく知りませんが、この本の第5章には、ヨガのインストラクターさんが読んでおいたほうがいいと思うことが書かれていました。図も文脈もある流れなので引用は避けます。そこには、わたしがよく耳や目にする以下のようなこととビジネスの矛盾を紐解くことが書かれていました。



「〜させていただく」という言葉やスタンスは、気持ちのよいビジネスと両立できてる?



この本の中では、営業マンと顧客を親子関係に見立て、「下手に出てりゃ、いい気になりやがって」と、子どもの振りをしていた営業マンがいきなりキレるというストーリーの分解がされています。
わたしは過去に、ヨガ事業をしている人のお話をききながら、そこにある矛盾に普通に返答をしてしまったことがあります。「良心的な価格でやっているのに……」と言う人に、「良心的な価格って、誰の良心ですか? それを自分で発信するのですか?」と。びびられてしまいましたが、その人のスタンスは、この本にある「子どもの振りをしていた営業マンがいきなりキレる」と変わらないストーリーのような気がします。「良心的」かどうかは、通い続ける生徒さんの「存在」で示されるものだし、面と向かって悪いことをいう人ってそんなにいない。



対価をもらってサービスを提供するなら、自分が気持ちよく商品を開発したり改良し続けることができる状態がエネルギー交換の最良の関係。そこをリアライゼーションできていないと、たぶんどんな仕事でも同じことになる。もしいまビジネスの面で悩んでいる人がいて、その状況を打破しようと思うなら、この本の第5章「ねぎらいセールス」のところを読むとよいと思います。



ほかのところは、コミュニケーションやストーリーで売るアプローチはカルトと背中合わせだし、それなりの覇権欲がないと無理だなと思う。でも人の足を引っ張ることにエネルギーを割くよりいいことは確実なので、なにか自分がオーナーとしてやっていることに疑問があるのであれば、読んでみるとよいと思います。
わたしは、「こういう手法をとると、どういう人に見つかるか」ということを実践しながら考えるのが好きなので、この本の中にたびたび出てくる、著者さんのスタンス表明を興味深く読みました。「わたしがこういう手法を伝えたらこういうふうに誤解されて、それについてはこのように反省して、いまはこう考えている」というのが何度も出てくる。ためになる経験談
「じゃあこうすればいいんですね?」という人は、いわゆる「意識高い系」の世界でもかなりの比率でずっといることや、あたりまえだけどやった人しか成果はみえないことも不変。




この本は、以下のような場面にはあまり向かない。


お客さんは背中を押されたい。というのはわかる。
だが、あんな強さやこんな角度で手を引っ張って連れてくると、長く続けられないであろう。


上記のような考え事をしている人には、「なぜ、真冬のかき氷屋に行列ができるのか?」という本をおすすめします。すごく煎じ詰めたことが書いてあります。ビジネスとインターネットのコミュニケーションバランスを哲学的に考えたい人には、「ソーシャルメディア進化論」をおすすめします。



今日紹介している「不変のマーケティング」は、いくらでも生産できるヨガウエアとか、クラスを増やせるヨガスタジオとか、そういう経営者向き。少し人心掌握術っぽく見えるけど、それはセミナーやメルマガの内容をテキスト化したライブ感のようなものでしょう。人心は知っても掌握しすぎなければいいんだよね。人心を知ることはだいじ。
にしても、やっぱり文体がオヤジ過ぎるなぁ(笑)。