うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ヨガ小説を書いた。パロディだけど。


昨年末からいっしょに仕事をするようになった女性・なおこさんが、ネイルキラキラのOL風情でありながら妙にクリエイティブだなぁとずっと思っていて、先日一緒にランチをする機会があったので趣味をきいてみたら、なんと長年小説を書いているという。
おもしろいことを考えている人というのは、いつもなんとなく目の奥が少しニヤニヤしている。



うちこ:一体どんな小説を書いているんですか?
なおこ:ミステリーが多いかな。会社の人、けっこう使ってる(笑)
うちこ:"使ってる"! わたしのことは、どんなに残念な人生にしても、凶悪なのにしてもらってもかまいません。
なおこ:ありがとうございます。
うちこ:小説は、わたしもチャレンジしたことがあります。
なおこ:えー! どんな?
うちこ:ヨガ小説。
なおこ:ヨガ小説?!
うちこ:ヨガの説明を小説で書いてみました。
なおこ:やだちょっと、なにそれおもしろい。
うちこ:ポーズとったことある人じゃないとさっぱりわからない上に、パロディなんですけど……。
(以後、応援のお言葉をいただきました)




彼女は「自分の小説は墓場まで持っていく。持っていき方が悩みの種」なのだそうですが、わたしのは「ブログがあるんだから発表しちゃえばいいのに」と。先輩に背中を押されたのと、最近はいろいろなことを雪のせいにできるらしいので、唐突に発表します。おまえ急に暇になったからって何やってんだという話なのですが、わたしのパソコンや携帯にはこういう日の目を見ないテキストがたくさんあります。




えっと。
詩のときもそうでしたが、こういうのはなんだか緊張します。
うちこ、小説いきまーす。





題名は、「吾輩はうつむいた犬である」といいます。超短編です。

吾輩はうつむいた犬である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも仰向いたあとで、吐く息で腹を見ていたことだけは記憶している。吾輩はここで始めて肋骨というものをしっかりと見た。しかもあとで聞くとそれは身体のなかで一番動揺とともに固まる場所であったそうだ。この肋骨というのは度々油断してだらしのない姿勢を作り出すという話である。しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。ただ肋骨を開いて背中を沈めた時何だかこころはずむような感じがあったばかりである。掌で床を押していたのが、腹の見始めであろう。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。第一圧力をもって突きあがるべきはずの尻の周囲がもったりとして、まるで尺取虫である。
 ゴム製の敷物の上でしばらくはよい心持に床を押しておったが、しばらくすると非常な重力で肩まわりが硬直し始めた。腕が弱いのか肩が凝っているのか頭が重いのか分らないが無暗に重く感じる。胸が悪くなる。到底助からないと思っていると、どさりと音がして膝から火が出た。それまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。
 ふと気が付いて見ると他の犬はまだ床を押している。肝心の指導者は「ウジャーイ」と吠えている。めずらしい声で吠えるものである。その上今までの所とは違って無暗に呼吸の音が聞こえる。犬のダースベイダーなのかと思う程である。はてな何でも容子がおかしいと、のそのそ尻を突き上げて床を押してみると非常に痛い。痛いがゆえそのままこの音を聞き続けるには時間が長く感じたのである。
 ようやくの思いで膝を伸ばすと向うに別の犬の頭がある。頸の付け根に、なにやら白く四角いものがある。シャツのタグである。吾輩は床を押しながらどうしたらよかろうと考えて見た。別にこれという分別も出ない。ワン、ワンと試みにやって見たが指導者が「ウジャーイ」と吠えてくる。そのうち背中の上をさらさらと風が渡っているのを感じる余裕が出てくる。顔の皮膚が非常に緩んで来た。ワンと鳴きたくても皮膚が動こうとしない。白く四角いものが気にかかるのは変わらないので仕方がない、何でもよいから意を逸らすべくそろりそろりと足を前に動き始めた。どうも非常に苦しい。そこを我慢して無理やりにしのいでいると、なんと指導者がもう少しだが大丈夫か疲れたのかワンと鳴く。急にやさしくなった。足を動かしたらどうにかなると思って崩れた腰から、もう一度尻を突き上げる体勢に戻る。縁は不思議なもので、もしこのときふてくされて座り込んでいたら、吾輩は犬のくせに猫背に陥っていたかも知れんのである。

みなさんもぜひ初心にかえり、うつむいた犬に自身を重ね、日々の練習に励んでください。
という思いを込めて書きました。




これ、やっぱりやりたくなる人、多いんだなー。⇒Twitter発・夏目漱石作品パロディNAVERまとめ)
モトネタもどうぞ(リンクは青空文庫Kindle版です)。