ブクブク交換で書店員の女性からいただきました。
学生の頃はよく小説を読んでいたけど、社会人になってからはエッセイ中心、ヨガを始めてからは伝記や実用書が多くなっていました。久しぶりに人がすすめてくれた小説を立て続けに読んで、「ああなるほど、みんな小説に励まされたり、短時間の現実逃避をしているんだ……」と思うようになりました。人生捨てたもんじゃない、と思いながら暮らすためのサプリメントのような感じですね。
この本の内容は(以下amazonの「MARC」データベースより)
初めて入った理容店。ついウトウトしているうちに、髪形はすごいことに! そのせいで、いつしか性格まで変わっていき、とんでもない出来事が…。髪形の変化が巻き起こす、愉快、痛快、爽快な「事件」を描く連作短編集。
ということで、すこし心を奪われながら現実逃避できて、ちょっと泣いたりして、気持ちよかったです。「髪がかり」というタイトルで2008年に映画化もされているそうです。
ネガティブな状態からすこし極端に立ち直っていくお話ばかりなのですが、人によって刺さるストーリーは違うだろうな。わたしは6つの短編の中では最後の話で号泣。ひとつめの「眉の巻」で30歳手前の女性同士が意気投合する感じなどは、とても懐かしくていっしょにワクワクした。
そのほか、「黒の巻」という記憶喪失の話は、記憶についての展開がおもしろかった。
私は記憶を取り戻した。しかし、記憶を取り戻したということは、過去の自分に戻ったということでは決してなかった。今の私は、記憶を失う前の自分ではない、明らかに変わったという強固な自覚があった。
潜在的に持っていた凶暴性なり冷徹さなりが、記憶を失ったことがきっかけとなって顕在化した、ということなのかもしれない。
記憶を取り戻すまではもしかしたら自分はヤクザだったのでは……と思う話なのだけど、実際はそんなことはなくて、もっとすごい話だったというオチ。この描写はすごくおもしろかった。わたしも記憶を喪失して戻るとき、こうなりそう。イメージよくピースフルにヨガの話は、こんなときのために……できない(笑)。
「道の巻」は組織の権威をふりかざす人を蹴散らす話なのだけど、やっぱりみんな、こういう話でスッキリしたいのかな。わたしは「同じ人間でも組織に入るとそうなることもある」という習性みたいなものを描いてくれるほうが楽しめる。
大筋は勧善懲悪というのが、ストレス解消になるのはわかるのだけど、わたしは最後の「花の巻」で描かれたような、生き方を変えたら自分の価値観を自分で探っていくんだ、という話の方が好き。この話はオーソドックスな定年退職ストーリーなのに、泣けた。
この本をすすめてくれた女性のコメント。「元気のもと」だって。
お話を作って文章にして人を元気づけることができるって、すばらしい力ですね。
リキタ・シャクティ・ヨガ*1だわ。そういう文章を書かなきゃね。