「常識にとらわれない100の講義」「つぶやきのクリーム」の森博嗣さんの小説を初めて読みました。
最近出たミステリー小説です。久しぶりに気持ちを持っていかれました。それも、情緒的に持っていかれるというより、官能的に。読後感がぜんぜんミステリーじゃない。
神様のさまざまな定義がストーリーに織り込まれているのですが、
- 神は万能だろうか
- 神はわたしを裁くだろうか
- わたしは神に愛されているだろうか
登場人物たちの、神に対するそれぞれの自問が複線となったのちに、驚きの結末が待っていました。
自分を無明にしているものは、なにか。
ふたつ、主人公の気持ちを引用します。
「自分で自分の欲求を理解していない、だから、こんなふうに捩じれてしまうのではないか」
「なにか保守的で倫理的な既成概念に僕が囚われているという可能性もあった。それくらいは認識していたけれど、それ以上には深く考えたくなかった。」
考えたくないことこそ、ほんとうのこと。
そういうこととの距離感から自分を解放してくれる唯一の感情は、美に捉われること以外にないかもしれない。
夜に、帰宅のバスの中で読み終えたのですが、あやうく乗り過ごすところでした。
ミステリーなのに自分に正直な恋をしたくなる、ふしぎな小説でした。
▼わたしはKindleで読みました(つい先のページを目にしてしまわなくて済むの)