うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

Yoga Nidra(ヨガニードラ) / Swami Satyananda Saraswati 著


ヨガニードラの解説本(英文)です。ディープ・シャバーサナともいわれるメソッドに関連するセオリー、練習の説明とスクリプト、科学的調査結果が載っています。
この本を読みながら書いたメモに、こんな記述が(わたしのつぶやき)

  • 人は喜怒哀楽の感情を心に刻んだその「はたらき」の原因が、自身の外部にある前提で捜し求めている行為の間にもカルマの経験(karmic experience)を積んでいる。
  • イメージトレーニングの重要性って、スポーツ選手のドキュメンタリーを見た後に「そうだよね!」と思うけど、また忘れる。

ヨガニードラは「攻めのイメトレ」というよりは、「浄化のイメトレ」。いいことを刻み込んでいくのではなく、刻んでしまった悪い印象や考え方の癖にアプローチしていきます。行為を通じて印象を刻む心(=脳)のはたらきを、サンスクリット語でvasanaというのですが、この癖を整えていく。(参考過去ログ:よい結果を正確に刻むこと/vasanaの使い方


寝て(Nidra)いるからヨガニードラ。瞑想であることには変わりなく、意識と催眠を切り離すために考えられたタントラの修練技術です。これを続けるとどうなるかは人それぞれだと思うのですが、わたしの場合は夢の内容から「自分が心の深いところで楽しいと思うのはどういうことなのか」がわかるようになりました。そして、それがわかること=実はイライラしているけど、なんとなくやり過ごしていることが何なのかがわかる、ということでもあります。さらに次の段階として、実は自分で取りに行ってしまっているストレスを減らすことを考えられるようになります。


好き嫌いをしている感が後ろめたくて押し殺しがちな、心の中ですらも表に出しにくかった「なにかが嫌」と思うことがあるときに、「心の深いところで嬉しいと感じること」と照らし合わせて見ていくと、理由があぶりだされます。具体的に書くとみなさんの心理的な誘導に繋がってしまいそうなので書きませんが、週に4日くらいのペースでヨガニードラを2ヶ月くらい続けた頃に、心の深いところにある悦び(「喜び」ではなく「悦び」がしっくりいく)に、ひとつの夢をきっかけに気づきました。
半分はリアルで起こったことを織り込んだ、身近な人が登場する半分日常のなにげない夢も、自分の中の意識のノイズが減ることで、悦びの種に眼が行きやすくなったようです。こういう発見は、今後も続くのかもしれません。



少し経験談を続けます。
わたしはこれまで眠りについてイビキ以外の悩みがなく、一緒に旅で寝床を共にした人のほとんどから「のび太レベル」と言われるほどで、年に数回しか夢を覚えていませんでした。でもこの練習をするとわりと覚えていて、それによって「うわー」と思うこともあるのですが、意外と自分でもわかっていなかった「悦び」が見え、なんじゃこりゃと思いました。意識をきれいにしてから眠るというのは、心の健康にとても大切な準備運動のようです。
ヨガの効用を自分なりに感じ続けて以後、その日の余剰エネルギーはその日に燃やして寝床に入り、毎日生まれ変わるように目覚める、というサイクルが自分の安定をキープする方法と思って暮らしてきたので、ヨガニドラの練習をしてもしなくても「のび太」であることは変わりありません。
わたしの経験上の感覚では「理由のわからないイライラ」に対してヨガニードラはかなり有効ではないかな、と思っています。この本の中では心の「はたらき」(vritti)を波紋にたとえて説明がされていますが、そのゆがみを整え、いびつに拡がったり波及したりすることを抑える、そういう効果があると感じます。



この本は英文でサンスクリット語も混ざっているのですが、読んだ後に自分なりに整理したメモの一部を紹介します。
「これはタントラの教義から運び出された、意識のリラックスを学ぶパワフルな技術です」という書き出しからはじまり、ヴェーダに関連する部分ではマーンドゥーキア・ウパニシャッドにある意識の四段階(トゥリーヤ)、ジュニャーナ・ブーミカの7段階まで触れ、付録には科学データ添えてありました。
ボリュームのある本なのですが、メモの中でも共通性のあるところを抜き出します。

  • 緊張を分解すると、3つの"張り" 「筋肉」「感情」「精神」。
  • 朝の起床時に疲れがあるとしたら、この3つの張りが晴れていないため。
  • 「催眠状態」と「感覚の隠退」は別。
  • (イダーとピンガラーを孤立させ)精神、神経、脳をつなぐアプローチ。
  • ゆすり、恐喝などの「洗脳」とは違う。脳に作られたネガティブ・パターンを正す。
  • 脳にはカルマ(行為)の経験とともに、無数の印象が刻まれている。
  • ヨーガは、不従順なマインド(の状態)への取り組み。
  • ヨガニードラは受容力のある状態へ整える「誘引の科学」。
  • 入眠直前の3〜5分に、内向性と外向性の周期のゆれの中間に近い状態がある。
  • 練習の前半で設定するサンカルパ(決意)は心を潤すことと共に行なう種まき。そこから意志力が育っていく。


瞑想だと膝や足首、腰が痛いって人には、ヨガニドラをおすすめします。プラティーヤーハーラという、感覚を抑える瞑想部分(ボディスキャン)が格段にやりやすくなります。今はスクリプトが音源として手に入りやすい時代なので、自宅でもできます。
ヨーガのクラスでは、アーサナの後に深いシャバーサナとして組み込むパターンが多いのだと思うのですが、上記のリストの「受容力のある状態」で意識のスペースの余裕をつくることで、よりよい動禅としてのアーサナに取り組めるという考え方をすれば、神経のはたらきを意識するアーサナ構成のクラスの前に行なう効用も大きいでしょう。わたしの場合は、ヨガニードラを「デフラグ」として設定するときはアーサナの前に、夜の眠りまで想定した「浄化」として設定するときはアーサナの後にというふうに考えています。
この本の中には、ヨガニードラの前に太陽礼拝を6回から12回くらいやっておくと事前エクササイズになる、とありました。



インド思想とともにある身体科学やスクリプトの構造、プログラム背景などは経験を通じて深く学んでいくのがよいのですが、たとえば「木」ひとつとっても、そこにどんなイメージを持つかは、その人の経験と紐づくということが書かれています。なので「シンボル」が有効なのだと。自然にまつわるトラブルのない暮らしなんてないから、たしかになぁ、と思う。
わたしは言葉を意識的に見る癖があるので、インド人の先生から英語で学んでみて思ったのですが、阿弥陀経のようなわりとビジュアルなお経の世界と一緒で、ローカライズ時には日本語の語感で誘発イメージが変わる。
まだ日本語の解説書でここまで掘り下げたものがないのですが、日本では同質のことが「子育ての読み聞かせ」の分野でよく語られています。このヨガニードラの本には、「脳下垂体のコントロールの土台が8歳までにできあがり、脳下垂体のはたらきかたの癖や分泌パターンは、直接的にメンタルと感情の活動、視床下部の調整に影響していく」とあります。
アプリの紹介のときも書いたのですが、ヨガニードラは特に小さなお子さんを育てるお母さんたちにおすすめしたいヨーガ。「あぁわたし、イライラしちゃった」と自分を責めるのではなく、「おっとあぶねぇ。子に恨み思考カルマを刻んでしまうところだったぜ! ふー」と、少しでも明るく科学的に対処できる思考の幅があったほうがいいかなと。


Yoga Nidra
Yoga Nidra
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この本は、amazonだと今は高いのが難です。
amazon.comamazon.ukだと1500円くらいです。

でもそもそも英語なので、日本語のヨガニードラ関連CDや本を、参考までにリンクしておきますね。

ディープリラクゼーション ヨガニードラ 寝たまんまヨガで簡単瞑想

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