うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

佐藤可士和の超整理術

仕事仲間から借りました。5年前の本です。
いちばんの読みどころは、ユニクロをはじめとするファーストリテイリングアートディレクションのエピソード。なかでもUTはわたしも好きなお店なので、ぐいぐい引き込まれました。柳井社長との問答プロセスがもっと聞きたかったな。
メインテーマを「整理術」とした、断捨離の先駆けのような内容。そのノウハウの前段階には圧倒的な人間観察がある。この本では情報や思考の整理に重点が置かれているけれど、人間観察の要素も少し散りばめられていて、整理術に興味がなくても面白く読めますよ。

<44ページ その場しのぎの対処では、問題は解決しない より>
 表面的な対処が問題解決にならないのは、対処療法が原因そのものをとり除くわけではないのと同じです。少し話がずれるかもしれませんが、僕自身、定期的に運動を始めたら、そのことをいっそう自覚するようになりました。

わたしの興味の矛先としては、この辺の話ももっと書いて欲しかった。

<52ページ 視点を持ち込んで、問題の本質に迫る より>
並び替えたり、プライオリティをつけていらないものを捨てたりすることで、あいまいな部分をなくしていきます。これがこうだからこうなる、というふうに関係性を見出し、整合性がとれるように整理していく。

アーサナ中の意識とよく似てる。

<125ページ 本質を探るには、引いて見つめることが大切 より>
 本質を探るということは、一見、物事の奥深くに入り込んでいくようなイメージがあるでしょう。でも実は、どんどん引いて離れていくことだと思うのです。

瞑想とよく似てる。

<154ページ まず、考えを言語化することから始める より>
 さて、思考を情報化するためにはどうしたらいいか。必要不可欠なのが、”無意識の意識化”というプロセスです。漠然とした状態の心理や、心の奥深くに埋れている大切な思いなどを掘り起こして、はっきりと意識する。そうすれば、整理したり、秩序だてたりといった次の段階に進むことができます。

のちにフロイト心理療法の話もでてきました。

<157ページ 仮説をぶつけて、相手の思いを確認する より>
「何度も仮説をぶつけてみるなんて、相手にうざったいと思われるんじゃないか?」
 ついこんな心配をしてしまう人もいるでしょう。でも僕は、あえて確信的に行っています。

(中略)

絶対的な目標を念頭に置いたうえでの発言なら、決して失礼にはあたりません。プロジェクトを成功させたいという思いを、その場にいる皆で共有できればしめたもの。ですから、成功したイメージ像やビジョンを語ったうえで、仮説を述べれば、真摯な気持ちからの発言であることが伝わるはずです。

「絶対的な目標を共有する」というプロセスも、とっても大事なことですね。世代ギャップのある仕事では特に。

<172ページ 他人事を自分事にできると、リアリティが生まれる より>
「他人事を自分事にする」

 これは思考の整理で非常に重要なポイントです。あいまいなものを情報にして、さらには問題点を見出して解決していくわけですから、自分との接点を見出さないと実感が湧かず、目指すビジョンも空々しいものになってしまう。これは、決してエゴを持ち込むことではありません。自分勝手なイメージを作り上げるのではなく、対象のなかから本質を導き出すというアプローチだからこそ、いかに自分のモチベーションを上げていくかが大事になってくるのです。ですから、対象をねじ曲げて自分に引き寄せるのではなく、対象と自分との接点に近づいていくことでリアリティが生まれるのです。

「対象をねじ曲げて自分に引き寄せるのではなく」というところは、いろいろと思うところがありました。

この教えのポイントとは少しずれますが、ヨガはいろいろな目的で興味をもたれる。たとえばヨガを始めてみようという人が「痩せたい」のが目的だとしても、それはそれでいい。「ヨガの本質は、そういうもんじゃない!」というほうがややこしい。60年代のヨガはLSDの代用が目的になっていたこともあるし、そんなことは数え出したらきりがない。
痩せることによって、その先にあることがこの先の喜びの想像の入り口なのだとしたら、動機はなんにせよ共感できます。どうぞどうぞ、ヨガがその役に立つかもしれませんよと。自分に痩せる必要がなくて、ほかの奥深い楽しみがあるのだよと思っていたとしても、はじめないことにははじまらない。後で楽しみが待っている。それも、確実に。ここが、ヨガのいいところだもんね。
ということになると、痩せたい思いもモチベーションとして理解できる。きっかけはともあれ、「継続は力なり」を共有するタイミングは、はじめた後に用意されている。



いつまでかは自分自身が「ヨガやってます」という視点だったのだけど、いつからかそうではなく、「これは、人間にとってどういうものなのだろう」という視点になった。そういうタイミングでこの本を読んだら、ノウハウ本としてではない楽しみがありました。
「整理する」には、ゴールに近いところの整理もそうだけど、自分自身の整理も同時にある。このパラレル進行のバランスについては「実践あるのみ」なのだけど、この本は著者さんの経験談が自然な言葉で語られていて、おもしろかったです。

佐藤可士和の超整理術
佐藤 可士和
日本経済新聞出版社
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