うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

暮らしの哲学 ― やったら楽しい101題 ロジェ=ポル ドロワ 著

「フランス人が見つけちゃった仏教っぽいあれこれ」のような本。ここに登場している提案を、日本人は古くからやっていたりする。
インドもフランスも哲学大国だと思うけど、インドのユーモアが「深すぎてうますぎて、笑っていいのかわからないけど、すごくおもしろいよ」と思うのに対し、フランスのユーモアは「もー、このエロオヤジ!」と瞬時につっこめる。逆にフランスは考えすぎでネクラっぽい時があるけれど、インドの場合はそれがない。見栄っ張りなところは共通ね。
いくつか、紹介します。

<項目22:名前も知らない食べ物を食べる  効果:動揺する より>
 名前を知ったからといって味は変わりません。しかし名前を知ることで、味に対する態度や考え方はたしかに変化します。名前を知らないとき、私たちはおそらく、より注意深く、おずおずと食べるでしょう。反対に、名前を知ったが最後、その物は言葉が支配する組織の一部になります。私たちは名前を食べるようになる。食べ物をつつんでいる言葉を咀嚼し、言葉のかけらを消化するのです。
 そこで、私たちはふだん、食べ物よりもむしろ単語をえんえんと食べ続けているのではないかという疑念がわいてきます。私たちは口のなかにある舌だけを味わっているのではなく、辞書のなかの言葉によっても味わっているのです。

「私たちは名前を食べるようになる」。
食べ物だけでなくソーシャルネットワークも、名前を食いあっているような気がする。メインディッシュにならない、知ってる副菜同士が増えていくような。

<項目24:疲労に耐える  効果:なんとも言いようがない より>
 疲労の目利きになってください。自分にはどういう疲労が適しているのか、また自分はどういう疲労をいちばん警戒しなければならないのかを見きわめること。そのために、猛暑のなかを歩いたり、長時間眠らないで起きていたり、えんえんと過剰な労働を続けたり、これでもかというくらいセックスをしたり……思いつくかぎりのことをしてみるのです。
 いずれにしても、そんなことをしていたら身体がもたないでしょう。さしあたって生じてくる問題は、そのことに気づいてほっとするのか、不安になるかということです。

過剰な労働は日本人の得意技かもしれないけれど、これでもかというくらいやることの例は、さすがフランス人。

<項目35:ていねいに字を書く  効果:我を忘れる より>
 筋肉の正確で細かい動き、ペン先の短い軌跡に注意を集中させます。紙の上に何行も何行も、ひたすらていねいに、つねに変わらないペースで書き続けていると、その行為があらゆる意思と無関係になってくるでしょう。
 言葉と思考とは別々のものだという実感がわいてくるかもしれません。操作され伝達される言葉を越えたところに、明確にはとらえがたい何かが、涸れることのない独自の運動をしながら流れているのです。その「何か」、すなわち思考のかけらは、言葉が言おうとしていることとは、まったく関係ないのです。

写経とか提案すると、超スペシャル・イベントになっちゃうんだろうな。

<項目58:ひざまずいて電話帳を音読する   効果:ありがたい感じがする 全文>
 定まった形式を好む人々は、こう言います。「ひざまずいて、祈りの文句をきちんと唱えていれば、いつかかならず信仰心が芽生えてくる」。まじめな信仰をもっている人が聞いたら怒るでしょうが、あながち根拠がないとも言えません。次のような作業をすれば、そのことを実感できるでしょう。
 数日のあいだ、毎日、同じ時刻に15分間、電話帳を毎回同じページ数分、大きな声で読みあげます。一行一行ていねいに、氏名、電話番号、住所を明瞭に発音すること。ある程度古い電話帳のほうがいいでしょう。古い電話帳を使うほうが、この朗読作業がいかにもなんの役にも立たないという感じ、また時を経ていることによって何かしらありがたいものを読んでいるような感じが出るので、なかなか好都合なのです。
だからといって、この朗読作業に何かの意味をもたせようなどと考えてはいけません。毎日ひざまずいて15分間、電話帳を何ページか朗読する。それだけです。これこそ実践というものです。
 膝をついて15分もじっとしていれば、膝も痛くなるでしょうが、その痛み以外に、この試みから何を引き出せるでしょうか。ばかげた拘束、奇妙な魅惑、有無を言わせぬ力。おそらくあなたは、自分のしていることに何かしらの理屈をでっち上げずにはいられなくなるでしょう。面白半分とはいえ、この朗読作業の目的と効果を説明できるような神話をつくりはじめることになるのです。
 どうしてもやめられなくなったら、教団を設立してください。

オチが小粋すぎて鼻につくわ(笑)。

<項目81:知らない女性に「あなたは美しい」と言う  効果:反応が楽しみ より>
 その後の展開については、自分で確かめてください。相手が腹を立ててそっぽを向いたとしても、たぶんそれはあなたのせいではなく、人間関係が荒廃している現代社会のせいでしょう。

「それはあなたのせいじゃない。現代社会のせい」という説明の、ものすごく正しい使い方。

<項目88:哲学書を読む  効果:勇気が出る より>
 何よりも必要なことは、重要なこととばかばかしいことを区別するという困った癖をなくすことです。本質的なことというのは、ばかばかしいものです。偉大な思想に爆笑したからといって、侮ったことにはならないということを実感してください。
 思想を尊重する最良の方法は、笑うことです。大いに笑いながら、哲学書を読んでみてください。

ほれきた、ヨガ。


本格的な哲学書はむずかしいと思うなら、まずはこんなところからどうかな。
おすすめよ。

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