- 出版社/メーカー: NECアベニュー(ビジュアル)
- 発売日: 1989/08/21
- メディア: VHS
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主要人物をイタリア人が演じていて、ほかはけっこう現地の人がやってます。これは、仏教を学んでいるイタリア人学生と大学教授夫妻が交通事故に遭い、車がくるくる転がって落ちて、「転校生」みたいなかんじで学生がミラレパ、教授がマルパになって…… というなかなか強引な展開。ファッション的には、教授の奥さん=マルパの妻ダメマ「転校生」する前のいでたち、バッグもみどころ。すんごい地味なんだけど、全身グッチっぽい。ブランドものは全く興味が無いわたしでも、なんか「かっくいいなこのファッション」と思いました。チベット以降の映像も素敵です。
そんな「転校生映画」なので、見はじめてしょっぱなから「強引かも〜」なんて思っていたのですが、ミラレパよりもマルパ役の俳優さんがなかなかよくてね。ちょっと太ってるんですよ(笑)。でもって、セルジュ・ゲンズブールみたいな色気があってね。修行の師匠役は全般西洋人なんですが、みんな福福とメタボなんです。面白い! 細身でエロすぎない妻ダメマさんとの組合せが、東洋味ジェーン・バーキンとセルジュみたいで、なんかいい。
そんな強引な映画ではあるのですが、ただでさえコンテンツの多いミラレパのエピソードのなかでも、「塔造り修行」にかなりの時間を割いていた点がものすごくよかったです。マルパの「わざと気まぐれな感じ」が、俳優さんがイタリア人であることによって天然的にムード拡張されています。映画の中では、マルパの死後の儀式のためにミラレパが帰ってきて、また山へ帰る。というところまでが描かれています。
映画自体の感想は、上記のような感じ。
そしてここからは、この映画に出てくるセリフの中でもグッときた3つをご紹介します。
<出だしのシーン より>
無の観念が慈悲を生む
慈悲が自他の区別をなくす
自他を混ぜると共通の目的が生まれる
共通の目的を実現するものがブッダとなる
無の観念からの展開が、いいですね。
<黒魔術修行シーンの、師のことば>
沈黙を呼びおこせ
心に立ち現れる
思いも形もきっぱり断ち切れ
アシの茎を切るように…
静止せよ
平静であれ
静止せよ
目で見るな
耳を使わずに触れよ
足を使わずに到達せよ
力ある言葉は少ない
お前達は力に満ちているが
自分達ではわからない
無知がこの世を抑えてる
無知の先には過去も現在もない
善も悪もない
沈黙を呼びおこせ
空虚を呼べ
心のくぼみに全宇宙がある
無知な者には
自然は死んだものだ
私は風を通じて話している
自分をブラフマという者はブラフマになる
だが一つの神性を崇め ──
"神は高く 私は低い"という者は ──
何も理解しない者だ ──
私がブラフマを創るなどと思うな
お前達の多くはブラフマになれない
逃げ去るがよい
愚かで無知な若者よ
ニャクの人をかき乱したな
ニャクは悪鬼だ
ニャクは悪鬼だ!
これは、身内への復習のために黒魔術修行をするシーン。ミラレパのダークサイド時代。
ミラレパと一緒に山を登ってきた数名のお友達は、ここで帰ってしまいます。
ひたすら瞑想中に、師が伝えます。
「目で見るな 耳を使わずに触れよ 足を使わずに到達せよ 力ある言葉は少ない」
「心のくぼみに全宇宙がある 無知な者には 自然は死んだものだ」
この修行場面の「黒魔術行使!」の印(ムドラー/ジャケ写もそれ)を見て瞬間的に、まことちゃんの「グワシ」を想起(厳密には違うのだけど)。まことちゃんもムドラー使いだ……なんてことを思いました。
ラストシーン。マルパが死んだ後、また修行へ戻るミラレパに対し、亡霊的に登場してミラレパにかける言葉
ふり返るな
心を散らすな
自ら悟った考えを口にせよ
ふり返るな
ふり返るな
実践一筋。
ちなみに勢いでサントラも入手したのですが……
有名な同監督の映画「愛の嵐」との抱き合わせ。で、43分でミラレパのサントラです。1曲、はい。みたいな驚きの構成。
美しいピアノ協奏曲なので、仕事中の息抜きに聴いています。