うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

私は夢を見るのが上手 宇野千代 著

宇野さんが95歳の頃に書かれたものです。もう耳が遠い、と書かれているころ。
この本は「恋愛の武士道」という章があるのですが、不況の今こそ、婚カツのまえにまずは読むべし、OLよ。といった内容。はげしく共感することばかりでした。

<24ページ 人生とは、行動すること より
 好きな人が目の前に現はれると、私は忽ちにして、その人のとりこになり、前後もなく考へずに行動を開始するのだつた。何の逡巡することがあらう。私はその人の目を真つすぐに見て、「私はあなたが好きです。」と言つた。好きだと言はれて不愉快に思う人はゐなかつた。恋は成就した。

そうなんだよなぁ。不愉快に思う人はいないから、たいがい成就するんだよなぁ。それが、実際言ってみちゃってそうなると「成就した!」って思っちゃうんですよね。

<61ページ 愉しい好きなことだけを より>
 私は自分のことを、今、若い人たちの間で流行してゐる、オタク族のはしりではないかと思ふことがある。私は何にでも、凝る癖がある。好な人が出来ると、その人の気に入りさうなものを、あれこれと考へたりすることに夢中になる。暫くほかのことには気が入らない。その間は、風邪をひいて寝込んだりする暇もないのである。年をとつて恋をしなくなつても、忙しい。

ヨギになつて前ほど恋をしなくなつても、忙しい。

<114ページ 恋愛の武士道 より>
 わたしの身内の者や親しい人から聞いた話ですが、近ごろ若い娘さんには、ボーイフレンドと結婚相手は別、といふのが多いさうです。これはわたしには分からない。男の子とつれだつてしよつちゆうわたしの所に出入りしてゐた娘が、お花の先生の紹介でお見合ひをして、別のお金持の所へ嫁いでいつたことがありました。経済的なことを、いろいろ自分なりに考えてのことでせうが、わたしにはそのやり方は理解できない。
 打算的だ、純粋でないと言つて避難するつもりはありませんが、自然ではないですね。
 ただ、自分の気持ちに忠実に、自然に生きていくためには、女も、いつでも自分で現金を稼げるやうな状態にしておくことが必要だと思ひます。貯金とか株券を持つていて利子が入るといふのではなく、生身の体で働いてお金を稼げるやうになつてゐれば、好きな男が現はれたときに、お金と関係なしに、自然な気持ちで「好きつ」と、駆け出していけるのですから。

「自然に生きていくためには、女も、いつでも自分で現金を稼げるやうな状態にしておくことが必要だと思ひます。」ということの主語を変えて、「現金が稼げないから、夫のいる家へ帰る」と人妻の友人が言ってたなぁ。モテる人なのだが。

<127ページ 折々のごあいさつ 東郷青児十三回忌 より>
 私は、男は仕事が一番だ、と思つております。その点、東郷はほんたうに立派な仕事をたくさん残してくれました。私は、心から敬服いたしてをります。

わたしも、男は仕事が一番だ、と思つております。

<161ページ 対談(瀬戸内寂聴氏) おとこと文学と 取り巻きはいい男ばかり より>
瀬戸内:お若い頃、川端先生とは何かおありになったんですか。
宇野:何でもないです。あまり魅力はありませんでしたからね。
瀬戸内:先生は、体の大きい方がお好きですね。よく私、梶井基次郎さんと宇野千代さんは本当に何かあったのかと聞かれるんですけれど、どうなんでしょう。
宇野:何にもないの。私は面くいでしょ。あの人は男の中の一番面くわずなの(笑)。だから私が惚れるわけがないのよ。だけど、書くものがすごくいいから、それだけは尊敬していたんですよ。他人からは惚れたとみえたくらい。

わたしは川端康成さん、写真で見てけっこう好みなんですが、世界のカワバタも一蹴されてをりまつ。梶井氏については「あんなブサイクに惚れるわけないじゃない(現代語訳)」って、おっしゃってますね宇野さん。

<185ページ 対談(瀬戸内寂聴氏) おとこと文学と こんな身の上相談をしてほしかった より>
(「同時に何人も愛せるのは、女だって同じ」という話をしたあと)
瀬戸内:よく世の中の人はね、絶対、二人を同時には愛せない。二人を同時に愛するのは純粋じゃないということをいうんですよ。でも、私はね、純粋って、そんなものじゃないと思うんです。一人で会っているときは、こっちがいい。こっちへきたときは一生懸命。それはやっぱり純粋だと思うんですけど、そう言うと人は怒りますね、みんな(笑)。私と先生がこういうお話をすると、全部一致するから困ります(笑)。そうだ、そうだということになる(笑)。

器用で時間があれば、本当にそうだと思います。同時に愛せない、のではなく、嫉妬という感情を生み出すことに耐えられない。「ほかを排他するということ?」という側面を思い、結局ゼロが明朗会計でいいね! となってしまうヨギも、まれにいるようです。


宇野さんの本を読んでいると、恋の盲目的な感じやとどまる感じを思い出したりすると同時に、その「気持ち」「エネルギー」がずっと男性に向けてあり続けることがすごいと思います。さすが「絶対積極!」の天風さんを師とあおぐだけあり。
「まだ若いのに」といわれる年齢の間にも、人間以外のことに恋をする時期ってものがあるんだなぁ、というのが最近の自分を幽体離脱的に見た状況なのですが、十何年かぶりに一人になるまで、自分に向き合う時間が少なかった反動かもしれません。
生きたものすべてが恋愛対象、というのも、なかなかよいものです。


▼おまけ 宇野さんネタ登場の本
寂聴・猛の強く生きる心 梅原猛/瀬戸内寂聴

私は夢を見るのが上手 (中公文庫)
宇野 千代
中央公論社
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★おまけ:宇野千代さんについては過去に読んだ本の「本棚リンク集」を作っておきました。いまのあなたにグッとくる一冊を見つけてください。