うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

幸福は幸福を呼ぶ ─ 人生の叡知235篇 宇野千代 著

日々の移動でなんとなーく読むのに、とってもほがらかな感じが読みやすくて。
「いやもう、ほんと、おっしゃるとおりよ」なんて思いながらニヤニヤしたり。宇野さんは、たぶん気持ちの分類で言うと「不快」だったんだろうなぁと思うことも、ちょっとユーモアを混ぜながら、「はい、では好きなだけ気にしててください。じゃ、そろそろ私、つぎがありますんで」と可愛いらしく、颯爽と去ってゆく。
どうでもいい噂話とか、一時的な親交ムードだけで何も生み出さない会合に出くわしてしまったとき、こういう本が処方箋(もしくは割切りスイッチ)になると思います。OLのみなさんは常に一冊、カバンにしのばせておくと良いですよ。

いくつか、心のポストイットを紹介します。

<96ページ 忙しい人は齢をとらない より>
 健康法と言うのは、体操をするとか、歩くとか、あれを食べるとか、これを食べないとか言うことではない。いつでも、なにか追いかけて行く目的があって、張り切っている状態でいることだと、この頃、そう思うのである。

 私はちょっぴり難儀をして、或るものを獲得する、そのプロセスが好きである。そして、その結果を人に語りたい、そう思って、その人々の面ざしを心に浮かべる。
それが私の生き甲斐になっているのは、可哀そうなことか。

 私に、若い若いと言って話しかける女の人は、決まって、気苦労の多そうな、心配性の人である。私が若く見えると言うことが、あり得べからざることのように言う。

 その人たちの言うように、もし私が若く見えるのがほんとうだとすると、原因は簡単である。私の生活が、その人たちに比べて、忙しい、と言うことである。
 朝から晩まで眼の廻るように忙しくて、自分の一身上のことなど、おちおち考えていう閑がない、と言うことである。
 人間らしい感覚を忘れ去るほど忙しいのが、この遣り切れない忙しさが、私を救っているところもある。一身上のことでくよくよする時間がない、と言うことだ。

一身上のことでくよくよする時間がなくなるほど、努力してみたらいいね。

<112ページ バカなことでも体験することが若さである より>
 バカなことはしたくない、と言う気持の中には、バカなことをして、損をするのはバカらしい、と言う、損得の感情がひそんでいるのではないか、と思うのですが、どうですか。あなたは吝嗇(けち)なのです。物質的な意味ではないが、精神的な意味では吝嗇なのです。その吝嗇な心をもって、人生の大きな得をとり逃がすようなことがあるのではないかと、私はそれを惧れているのです。

心配事をする時間のほうがリスクだったりね。思いっきりやったことは、すごーくあとで恥ずかしいかもしれない思い出でも、なんだか愛しかったりしますね。

<119ページ 辛いと思うことの中に体ごと飛び込む、すると辛さはなくなる より>
 暴風雨の中にある自分を、暴風雨にならない前に想像することは無駄である。
 破綻は想像した通りの形でやって来た。しかし、暴風雨は想像したのとは全く違った形でやって来た。夢中で雨の中に飛び出している間に、不思議に恐怖は消えて了う。

インフルエンザだって、意外に別のことから感染するかもよ! これは国民性もあるかもなぁ。

<133ページ 後悔している暇がない より>
 どうもおかしなことであるが、一体に私は、昔のことを振り返っては考えないような性格なので、何かのことの序(ついで)に、昔のことを思い出すことはあっても、「あのとき、ああすれば宜かった」と思うようなことは殆どない。後悔しても始まらない、と思うからではない。過去のことは、もうそのとき、充分に傷つき、或いは喜び嘆いたので、あとから補足したいような気がしない。忘れて了ったのではないが、あたかも忘れ去って了ったかのように、そのことに対して、感情を補足するほどの感動がない。

そのとき思いっきりやっておくと、本当にそうなんだよなぁ。感情を補足するものが残らない。

<242ページ 創造のもとは小さな思いつきから より>
 私はこの、きもののデザイナーという仕事が、とても好きである。しかし、世間には私のことを、あの人は小説家の癖に、文学ときもののデザインと、二股かけた仕事をしている、と言って、私を非難する人が少なくない。果たして私は、二股かけた仕事をしているのであろうか。
 しかし、私は自分のことを、二股かけた仕事をしている、困った人間であるなどとは、決して思ってはいない。小説を書くことと、きもののデザインをすることと、どちらも、仕事の分野が全く違っているもののように見えるのであるが、実は外観がそう見えるだけであって、どちらの仕事の内容も、それまでには全くなかったものを、新しく発見し、切り開いて行くと言うことでは、少しの違いもない。同じ仕事なので、私はその二つの間に、少しの矛盾したものも感じないで、この二つを同時に遂行して、ちっとも困らないでいる。

こんな素敵なことが非難される時代があったのですね。その時代のなかでこのテンション。素敵だ。


宇野さんは、人の話をじっくり聞くような人だったのだろうか。人と話していても、「この人は無駄な気苦労に時間を費やしているなぁ。相手してたらきりがないなぁ」と思うような場面が多かっただろうに、と思う。「あのー、次のデート行っていいですか」と(笑)。

幸福は幸福を呼ぶ―人生の叡知235篇 (集英社文庫)
宇野 千代
集英社
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おすすめ度の平均: 5.0
5 最高に好きな本です。
5 絶対オススメ
5 意志力や言葉が引き出す幸福
4 ステキで幸せになるための知恵!

★おまけ:宇野千代さんについては過去に読んだ本の「本棚リンク集」を作っておきました。いまのあなたにグッとくる一冊を見つけてください。