うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ハタヨガの真髄―600の写真による実技事典

いかん! このままではお笑いブログになってしまう。と危機感を感じましたので、寝かせていたヨガの大御所本を紹介します。「あれ? これってまだ紹介していなかったっけ」といわれそうなこの本は、B.K.S. アイアンガー 著/沖正弘 監修。この上ないタッグで、普及版でありながら値崩れしない、名盤レコードのような本です。
これは、高野山へ行く前に買いました。訪れたヨガスタジオやヨガ仲間の家などでちょいちょい読んでおり、なんとなく買わずにいたのですけれども、旅の間にゆっくり読もうと思って入手しました。実技の写真がいっぱいですが、沖先生の「自前節」を封印した解説も読みどころ。
ポーズについては、もう「一人くんずほぐれつ」なアイアンガー先生です。アーサナの説明以外でいくつか、ご紹介します。

<41ページ ヨガとは何か? より>
アパリグラハ
「パリグラハ」とは集め、貯えることであり、それにとらわれないことを、「アパリグラハ」という。これは盗まないという「アステーヤ」の一面である。本当に必要でないものを得るべきではないように、そのときに必要でないものを集め、貯えるべきではない。働かずに求めるべきではないし、他人の好意に甘えるべきでもない。なぜなら、それは精神の貧しさを意味するからである。ヨギは物をむさぼり集めたり、それを貯えたりすることは、神、そして自分への信仰が不足しているからであると見なしている。ヨギは、月の姿を目の前に描きつつ、信仰を守っている。月は、半月間は人間が眠りについた後に昇るのであるから、その間は、人は月の美しさをほめたたえはしないが、人がほめるほめないにかかわらず、月は自らの道からはずれはしない。

「人がほめるほめないにかかわらず、月は自らの道からはずれはしない」というのが本当にすばらしい説明です。「ほめられないとできない人」を卒業するカリキュラムとして、ヨガはとってもよいものですが、何年やっても"外から見た自分"(要は評価)にとらわれ続ける人もいます。不思議。

<49ページ ヨガとは何か? より>
 アサナをしているとき、ヨギの身体は、いろいろな種類の生物に似た形をとる。このようにしてヨギの心は、いかなる生物も軽蔑しないように訓練されるのである。なぜなら、最も下等な昆虫類から最も完成された賢者に至るすべての生物は、ただ形が異なるのみであって、みな同じ宇宙の魂をもって存在しているからである。最上の形は"無形"であって、宇宙と一体になるものである。本当のアサナでは、ブラーフマンの考えが、たえまなく求道者の心にゆきわたるものである。

生き方としてのヨガ」にも書いてありました。

<68ページ ヨガアサナ、バンダ、クリヤ より>

アサナは身体だけで行ない、脳は受身にとどまって、油断なく身体を観察すべきである。脳までもいっしょになってアサナを行ってしまうと、自らのまちがいを観察することができなくなる。

覚えておきたい。

<459ページ ヨガアサナ、バンダ、クリヤ より>
(12)プラーナーヤーマ練習中は、その間目を閉じて行い、聖音あるいは聖者の名前を心の中で繰り返し唱える(ジャパ)。聖音あるいは聖者の名前を心の中で繰り返すことにより、ヨギの心には種子(ヒージャ)が生まれ、育つ。

わたしがいま行っている道場ではマントラを唱えたりはしないのですが、ヨガというものを自分なりに探求していく中で、日本人としてなじみやすい「真言」にたどりつきました。空海さんがヨガ宗ということもあるのですが。「南無大師遍照金剛」を3回唱えるとちょうど10秒で吐く呼吸になりますので、この聖者の真言を唱えます。それはちょっと息が続かない、というのであれば「南無興教大師」など、バリエーションも豊富です。
ちなみに先日大河ドラマの中で亡くなられた上杉謙信公の無事を周りの人びとが祈る場面でうっすら聞こえていたのは「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」ではなかったかしら。薬師如来に無事を祈っていたのでしょうか。興味はさておき、少しでも真言を知っていることで、歴史ドラマの味わい方がこんなに変わってくるというのは、最近の発見。


あれよあれよという間に、ヨガをきっかけに仏教探求がすすんでいますが、どんなものにしても自分の生活のなかに取り入れやすい方法を見つけるのも、ヨガの楽しみ方のひとつのように思います。ヨガを始めたばかりの頃のわたしであれば、この本はポーズ写真ばかり見ていたのではないかと思うのですが、いまは教えがさらに興味深いです。沖先生の「自前節」ではない解説を読んでいると、ちょっと物足りないのもまた面白み(笑)。

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