うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

インド社会と新仏教―アンベードカルの人と思想 山崎元一 著

インド社会と新仏教―アンベードカルの
アンベードカルの生涯」「ブッダとそのダンマ」に続いて、三冊目。図書館で借りてきました。理不尽だとか不平等だとかいう日常の些細な怒りなど、この人の名を聞いただけで吹っ飛んでしまいます。

この本は、本編のあとに〔付篇〕として「カースト制度と不可触民制」という資料文献が納められており、食事、職業、結婚などの制度や就学構成比のデータが載っています。また巻末にはインド共和国憲法のなかからカーストの平等を説く条項が抜粋されており、この一冊を通してインドの不可触民制について学ぶことができます。

どんだけ偉大なのよって話は「アンベードカルの生涯」の紹介を参考にしてください。

今回もいくつか引用して紹介します。

<36ページ ガンディーとの対決 より>
アンベードガルはガンディーに向かって、会議派の不可触民政策は冷淡かつ形式的なものであることを訴え、「あなたは私が故国をもっているといわれるが、実際には私に故国はない。われわれを犬や猫以下に扱い、水さえ拒むような国や宗教を、どうして"自分のもの"といえるだろうか」と迫った。(中略)ガンディーはロンドンに着くまで、アンベードガルを不可触民問題に熱心なバラモンだと思っていたという。

こんな聡明な不可触民がいるなどと、想像もしなかったのでしょう。

<40ページ ガンディーとの対決 より>
ガンディーの断食は、予定通り九月二○日から始められた。この断食にインド中が大きな衝撃を受け、すべての眼がガンディーの容体とアンベードガルからの言動に注がれることになった。ガンディーの生命を救うためには「コミュナル裁定」(補記:被抑圧階級に対して選挙権を認めるもの)を変更せねばならず、そのためにはアンベードガルの承諾が必要とされたからである。全インドの不可触民を代表する立場に置かれたアンベードガルは、(その後以下のアンベードガルのことばに続く)
 マハートマは不可触民制の廃絶をカースト=ヒンドゥーに求めて断食に入ったことはないのに、不可触民の権利要求を阻止するために断食を始めた。マハートマのこうした行動は、彼を信奉する者たちによる不可触民に対するテロリズムを全国的に横行させるであろう。多くのコミュニティに分離選挙が認められているのに、マハートマはなぜ不可触民の分離選挙のためだけに断食死しようというのか。わたしは不可触民に不利益となるような妥協はしない。

断食という暴力。

<80ページ 現代のマヌ より>
一方でガンディーは、アンベードガルの政治家・法律家としての能力を高く評価していた。ローガンデーが『アンベードガル伝』のなかで伝聞として記すところによれば、適当な憲法学者が見つからずに悩んでいたネルーに、アンベードガルの名を挙げて推薦したのはガンディーであった。

伝聞ですが。

<116ページ 不可触民の起源 より>
(アンベードガルの説では)『マヌ法典』の時代(前二世紀─後二世紀)には不浄性をもった集団はいたが不可触民は存在しなかったとみて上限を定め、七世紀前半の玄奘旅行記が不可触民の存在を認めていることを論拠に下限を定める。

あぁここでも玄奘三蔵・・・。

<181ページ 〔付篇〕カースト制度の構造/ヴァルナとジャーティ より>
七世紀前半にインドを旅した中国の玄奘も、『大唐西域記』のなかで、インドにはバラモン(浄行)、クシャトリヤ(王種)、ヴァイシャ(商買)、シュードラ(農民)という四種姓があり、それぞれにまったく個別な社会集団となっている。結婚は各種姓の内部、あるいは種姓を構成する亜集団内部においてのみ行われる。四種姓に属さない雑姓も非常に数が多く、それぞれ同類をもって集まっている。

大唐西域記』、読まなきゃ。

<187ページ 〔付篇〕カースト内部の構造/食事 より>
ヒンドゥー教徒にとって食事は一種の儀礼とみられており、食物を穢れから守るために細心の注意が払われる。
(中略)南インドではこの種の規制は厳しく、たとえば益の水売りはつねにバラモンであるという。バラモンからならば、すべてのカーストの者が水を受けることができるからである。
(中略)食物に関する規制は、水に関するものよりも厳しい。とくに「誰が調理したか」が問題とされる。レストランの料理人にバラモンが多いのは、水売りの場合と同様に、彼の料理したものはだれでに食べることができるからである。

いま現在、どこまでこのような状態なのか知りませんが、この状況を知った上で旅行に行っていたら、もっと深いインドを観ることができただろうなぁ。


「権利を主張する」ことの意味を、怠ける理由にフル置換する人が増えている昨今、多くの日本人に知ってもらいたい偉人です。

インド社会と新仏教―アンベードカルの人と思想 (1979年)
インド社会と新仏教―アンベードカルの人と思想 (1979年)山崎 元一

刀水書房 1979-07
売り上げランキング : 910311


Amazonで詳しく見る
by G-Tools