最近いつも鞄になんでもいいからブッダのことばをしのばせています。寂聴さんの文庫は手軽に手に入りわかりやすいので、チョコレート感覚で買ってます。
この本は、詩の集まりのような「法句経」のなかから寂聴さんがセレクトしたものを、寂聴さんのことばで解説してくれたもの。423ある詩のなかから、57の詩がピックアップされています。
さらにそのなかから、いちばんうちこ的に素敵だと思った詩(54番目の詩)を紹介します。
花の香は風の流れにさからわない
栴檀も伽羅もジャスミンも
けれど善い徳のある人々の香は
風にさからっても進む
四方八方にその徳の香は
流れていく
目先の目的ではなく、「こうあるべきではないか」という信念に逆風が吹いたとき、読み返したい詩です。逆風は、外からも内からも吹いてきますから、「もうなんだか面倒くさくなってきちゃったとき」にも読み返したい。
「現代翻訳」という仕事は、「流行に乗せたわかりやすさによって本質を曲げてはいけない。でも、その本質の伝道力はそのままに伝えたい」という葛藤を想像すると、ものすごく体力がいるし、そのうえにアカデミックで芸術性の高い仕事だと思います。
寂聴さんのようにあたたかく、ちょっぴりシニカルで、魅惑的な訳をリアルタイムで読める時代に生まれてよかった。
寂聴生きる知恵―法句経を読む (集英社文庫) | |
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