うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

行動経済学 経済は「感情」で動いている

行動経済学 経済は「感情」で動いてい
知人のブログのコメントを参考に買ってみました。経済学というと難しそうに感じるかもしれませんが、マーケティング心理学本といってもよい内容だと思います。有名な「囚人のジレンマ」をはじめとした、たくさんの実験実例とその理論が書かれています。
これを読んでいて思ったのは、「いちばん最初にこの経済観念を行動として学んだのは、遠足のおやつだな」と。300円という範囲の中で何を選択するか。王道と冒険の比率、時間差による違い、「バナナはおやつに入りますか?」という往生際の悪さ、などなど。これだと思いました。
実験の実例に、3日間連続で行われるレクチャーの席で食べるスナック菓子を「3日分をまとめて選択させた場合」「毎回選択させた場合」に、前者ではすべて違うものを選ぶ人が多かったのに、後者ではすべて同じものを選ぶ人が多かった、という実験結果がありました。私も、ヨガの時に持っていくドリンクで同じことをされたら、たぶん実験どおりの行動をとると思います。

この本は、なぜ健康にも美容にもよくないとわかっていながらケーキを食べることにお金を使うのか。「経済人」にはありえない判断であるというとっかかりから始まっています。その後、数々の実例をもとに「なので人間の選択基準には『感情』が大きく起因している」という立証が続いていくわけですが、ものによっては「他の多くの人ははそうでしょうけれど、わたしはそうではない」と思うものがあり、意外と経済人(=嫌なヤツ)かも、と思いました。時間の使い方について、特に。

今回もいくつかページのメモを残しましたが、厳選してふたつ引用します。

<88ページ「ヒューリティクスとバイアス」の章より>
アンカリング効果から確証バイアスといわれる傾向が生じる。確証バイアスとは、いったん自分の意見や態度を決めると、それらを裏付ける情報ばかり集めて、反対の情報を無視したり、さらに情報を自分の意見や態度を補強する情報だと解釈するというバイアスのことである。さらに、確証バイアスから自信過剰という傾向が生じることもわかっている。

要は「ものは言いよう、理由は後付け」みたいな話ですが、このバイアスっていうのは不快の原因になって嫌ですね。生々しい経験で言えば、職場を離れていく人が行うバイアス発言とか。言わなきゃいいのに。

<305ページ「他者を顧みる心」の章より>
フランスの詩人ポール・ヴァレリーがこの点を鋭く指摘している。「罰することが道徳心を弱らせてしまう、そのわけは、罰することで罪に償いが終わったと思わせるからだ。罪は罰への恐怖を刑への恐怖におとしめる〜要するに罪をゆするわけだ。そして罪を取引のできる、計量できるものにしてしまう。値切ることも可能なのである。」

これ、本当に怖いことだなと。過去の経験に対しても思います。ちなみに「この点」というのは、学校への遅刻を罰金制にしたら逆に遅刻が増えた(親が「金銭を負担することで罪滅ぼしになるなら」という行動が多かった)という実例から。


引用した部分からもわかるかと思いますが、経済学=心理学で、このような視点での分野を「行動経済学」としているのは本当によくできた言葉だと思います。一貫して「経済人=嫌なヤツ」といった印象を抱く内容ですが、少しずつ奉仕の精神が育っていきつつも、生々しい経済人的選択を目の当たりにしながら生活する毎日に、うちこは今後バランス経済人になれるのかな・・・と、以後の自分の考え方にいちいち影響しそうで怖い一冊でした。

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