うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

バガヴァッド・ギーター 上村勝彦訳(岩波文庫)

(★追記★ 2012年に書いた『従者マウントの書として再読「バガヴァッド・ギーター」』もあわせてそうぞ)
今週の通勤読書はこれでした。ヨーガ・スートラやインドにまつわるさまざまな本を読んでいく中でたどりついた、インドの聖典です。読み始めは、「わ。この本あきらめちゃうかも」と思ったのですが、最後はもう一度気になる箇所を読み返していました。不思議な本です。


今日はたくさん書くので目次つけます。

  • よくわかんない人向けの解説
  • 存在は知っているがまだの人への解説
  • この本とのつきあい方
  • メモしておきたい箇所の引用と、この教えの素晴らしいところ

という流れで書きます。


まず、「よくわかんないけど、うちこ何読んどるの?」という人に向けた簡単な解説をすると
 ・「バガヴァッド・ギーター」は、めちゃくちゃ壮大な十八巻からなる大叙事詩マハーバーラタ」の一部。
 ・「マハーバーラタ」はインド人にとって定番中の定番みたいな古典。この登場人物の量理解できるなんて、インド人すごい。「源氏物語」みたいな話ではないので。
 ・「マハーバーラタ」は徳川家の家系図並みにたくさんの登場人物がいて、しかもそれぞれに別名があったりするので非常にややこしい。
 ・「バガヴァッド・ギーター」はその家系図の中の「クリシュナ(別名:聖ヴァガヴァッド)」が「アルジュナ」に解いたヨーガの教えを中心としたもの。


「読もうとしたけどよくわからなかった」という人に向けた簡単な解説をすると
 ・「バガヴァッド・ギーター」は、「クリシュナ=聖ヴァガヴァッド」「サンジャヤ=その問答の語り部」という状況を理解しないと混乱する
 ・日本人なら仏教(ブッダ)の教えを先に読んで、読み比べると面白く読める
 ・もしインドの美容健康に興味のある人なら、アーユル・ヴェーダに関する書籍を読んでおくだけでも読みやすくなると思う


さて、この本はまるで恋に落ちるように読み終えた感じなのですが、各構成とのつきあい方をうちこなりに書いてみます。
まえがき
 「マハーバーラタ」のダイジェスト要約ですが、無理についていこうとしないほうがいいです。完全に理解するのは「マハーバーラタ」自体を解説した本を読まないと無理です。なので、クリシュナとアルジュナの関係だけマークしておけばよいです。
第1章〜18章
 文体や語調に慣れてくるとどんどん引き込まれます。後半になるとよりためになる教えが多くなり、終わりの頃にはすっかり引き込まれるはずです。注釈と行ったり来たりしないほうがよいです。
注釈
 文字量的には、本編よりも多いくらいですが、本編の後に読むことでよりインド哲学やインド文化のキーワードを読み取りやすくなります。
解説
 クリシュナの説いていること、アルジュナとの問答から見える特性を要約してくれています。最初に読んでもいいかもしれません。


最後に「これは!」と思ったメモ。ほんの少しだけ抜粋。

<39ページ 第2章 より>
アルジュナよ、執着を捨て、成功と不成功を平等(同一)のものと見て、ヨーガに立脚して諸々の行為をせよ。ヨーガは平等の境地であるといわれる。実に、一般の行為は、知性のヨーガよりも遥かに劣る。知性に拠り所を求めよ。結果を動機とする者は哀れである。

クリシュナがヨーガについて語り始めた最初の頃に出てくるくだりの一部。

<107ページ 第12章 より>
何ごとにも期待せず、清浄で有能、中立を守り、動揺を離れ、すべての企図を捨て、私を信愛する人、彼は私にとって愛しい。

クリシュナがアルジュナに語るヨーガについての終盤の一部。

<264ページ 解説 より>
一般の社会人は自分の仕事を遂行しながら、寂静の境地に達することが可能であろうか、多くの古代インド宗教書は、社会人たることを放棄しなければ、解脱することは不可能であると主張する。それに対し「ギーター」は、自己の義務を果たしつつも窮極の境地に達することが可能であると説く。それどころか、社会人は決して定められた行為を捨てるべきではないと強調するのである。

もはやコメント不要。


この教えでは、一貫して同じこと「平等、中立であること」が繰り返し説かれていることが2章と12章のピックアップからわかると思います。そして、最後の引用はこの本の表紙の文章でも要約して記載されている通り、「現世の義務を果たしつつも窮極の境地に達することが可能であると説いている」という点が、ギーターが長く伝道されているゆえんでしょう。
実際読んでいて、こんなに古い聖典でありながら、現在の自分にものすごくしみ入る教えです。


先にも書きましたが、すべての人に「今すぐ読んだほうがいい、とおすすめしたい」というにはサンスクリット語やインド特有の「要素を示す表現」が多いので、インド文化に慣れていない人には読みにくいかもしれません。ですが、アメリカに右へならえの成果主義の傾向にある企業で働いていたり、信念を持って仕事をするのにつらい状況を抱えているような人には、とても救いになる聖典だと思います。


★追記★ この本はいろいろと思うところがあり、再読しました。
従者マウントの書として再読「バガヴァッド・ギーター」
★おまけ:バガヴァッド・ギーターは過去に読んださまざまな訳本・アプリをまとめた「本棚リンク集」があります。いまのあなたにグッときそうな一冊を見つけてください。