以前「ヨーガ根本教典」の感想を書きましたが、その続編です。収録されているのは、「ゲーランダ・サンヒター」と「シヴァ・サンヒター」です。
いずれも、解読に非常な労を必要としたものであることがわかります。参考までに、章の構成を記載しておきます。
ゲーランダ・サンヒター
第一章:身体に関するヨーガ説示
第二章:アーサナ(体位法・32の体位解説)
第三章:ムドラー(26のムドラー解説)
第四章:プラティアーハーラ(制感法)
第五章:プラーナーヤーマ(調気法)
第六章:ディアーナ・ヨーガ
第七章:サマーディ・ヨーガ
シヴァ・サンヒター
第一章:宇宙観
第二章:人間論
第三章:ヨーガの修習
第四章:ムドラー
第五章:雑録
今回もいくつか印象に残った部分を紹介します。
<冒頭のはしがきより>
仮にヨーガが日本の社会に、非常な勢いでまん延するような時が来たとしたら、どういうことになるだろうか? このことを想像すると、手放しで喜んではおれないことに気がついたのです。人間の歴史がいつの時代にも例示しているように、初めは立派な思想運動がしばしば、汚濁した人間の野心や貪欲や無知にけがされていって、しまいには、社会から捨て去られるか、社会を毒殺するかの運命をたどることになります。
まさに予言。
<47ページ「ゲーランダ・サンヒター」の「アーサナ(体位法)」より>
(ムクタ・アーサナの解説で)シッディ(siddhi)はヨーガ修行の完成とその結果得られる超能力をいう。真言宗では悉地と書く。
この著者の方の解説が良いと思うのは、このように身近な仏教に結びつく要素をくまなく拾って注釈をいれてくださっているところ。
<144ページ「シヴァ・サンヒター」の「宇宙観」より>
マントラ・ヨーガはマントラ(mantra 呪文、真言)を唱えることを主とするヨーガの一派。
この注釈も、日本にヨガを持ち込んだ空海さんの真言宗との結びつきがピンときてよいです。
<173ページ「シヴァ・サンヒター」の「人間論」より>
(一)小宇宙
この肉体の中にメール山があって、七つの島に囲まれている。そこに河があり、海があり、山があり、田地があり、領主がいる。
(注釈)
メール(meru)山はこの世界の中央に天にそびえるとされる神話的な山である。インドの伝説的世界像では、世界の中央にメールという名の高山があって、その麓をめぐって四方に七つの島すなわち大陸があって大海の中へつき出ていると説かれる。このメール山の頂上にはインドラ神(帝釈天)の宮殿があり、その他の神々もこの山に住み、日月はこの山の中腹を廻っている。
シナの仏教では須弥(Sumeru)山と書き、訳して妙高山という。ここで体内のメール山というのは脊柱のことである。
新潟県に妙高山という山があります。気になって調べてみたら「山名は、仏典の須弥山(しゅみせん)を妙高山ということにちなんでいます。和銅年間(708〜715)に開山され、中世には修験者の行場として栄え、信仰登山が行われました。」という解説を見つけ、(引用サイトはこちら)仏教とヨガと、身近な土地の関係にちょっと感動しました。
<195ページ「シヴァ・サンヒター」の「ヨーガの修習」より>
物欲に執する人々、グルに対して信頼の念を持たない人々、多くの欲望を持っている人々、グルに対する崇拝の念を欠いた人々、無駄話にふける人々、ことばの残忍な人々、グルに満足を与えない人々はヨーガのシッディを得ることは到底できない。
「無駄話にふける人々」「ことばの残忍な人々」が印象的。
今年はこのような本をたくさん読むことができています。この後にも数冊控えているのと、同時に7月からは解剖学の書籍もコンスタントに読みすすめています。ヨーガの世界は学べば学ぶほどに仏教との結びつきの発見が多く、身近な社やお寺の見かたも変わってきます。日本人としてヨーガのある生活ができる毎日は、本当にすばらしいものだなぁ、と志を新たにしました。
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