この本は、すべての身近な人にすすめたい。是非読んだほうがいいです。日本人の国民性について、つい最近海外へ行ったので比べて見直すことが多かったのですが、日本の国民性のルーツを紐解くような内容です。冒頭で興味深かったのは、コーランやバイブルのように「固定された戒律」のない神道についての解説。
<15ページ 「自然崇拝はなぜ生まれたか」から>
(すこし文章を前後して引用します)
砂漠地帯などの自然の脅威は永続的なものだ。それにたいして、台風、洪水、地震、噴火などの日本の天災は一過性のものに過ぎない。それゆえ、日本人はそういったものを一時的な神の怒りとして説明した。このような豊かな土地にいたから、日本人は自然の恵みに神を感じた。しかし、生活をするのが困難な砂漠のような土地に住む人間は、自然現象を人間の敵と考えざるをえなかった。そして、そのような生活に適さない土地の人間は、人類に厳しい掟を下す一神教をつくった。
この本全体をとおして、和を重んじる神道の性格について書かれていますが、以下のことも興味深かったです。
<131ページ 「国学と尊皇攘夷の時代」から>
十八世紀末に国学を大成した本居宣長は、次のように主張した。「儒教は『忠』や『孝』といった形式的な道徳で人間を縛るが、私たちは生まれながらにもっているまっすぐな心の命ずるままに自然に生きるべきだ」
教科書で国学者、としてその名前はインプットされていたけれど、この歳になってはじめて日本の歴史と本居宣長という人物について知りました。
この本のちょっと面白いところは、非常にためになる日常に根付いた神道を解説し、「なるほど」と思うことが多い本なのに、あまりの解説の丁寧さで以下のような内容がたまに登場すること。鳥居や注連縄など神社のさまざまな由来について説明している章で・・・。
<169ページ 「巫女になる方法」から>
伊勢神宮では、毎年十人ほどの巫女を募集するが、その二倍から四倍の応募があるといわれる。正式の巫女ではなく、年末年始などの時期のアルバイトとして巫女になるのは、比較的容易である。
すごく発見と興味深い歴史情報のなかに唐突に登場するのが笑えます。このくだりを読んで巫女になりたいと思った人に役立つ情報を、とでも思ったのでしょうか。年齢制限なども書かれていて、期待以上のサービスです(笑)。
この本を読んでいると、日本人の国民性って、なかなかいいじゃないと思うような場面が多いのですが、以下のようなことも興味深かったです。
<198ページ 「神道の生死観と神葬祭」から>
自殺を大罪とする宗教も多いが、神道では、自殺者の霊魂も不慮の事故や犯罪の犠牲になって亡くなった者の魂も、ともに神になるという。つまり、恨みをもって死んだ者が自縛霊になって永遠に祟るという発想は、本来の神道にはない。
日本人の国民性について、保守的だとか事なかれ主義だとか、マイナスイメージで語られることがありますが、一度歴史を通して国民性を学ぶことで、「素敵じゃないか。日本」と思えました。
日本の小さな行事から日常の習慣まで、日本の自然が生んだ、古代から引き継がれる人間性の形成の歴史は知っておきたいですね。タイトルどおりの一冊です。