うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか 辰巳渚 著

借り物本。サブタイトルは「ミステリアス・マーケット考現学」。マーケティング本ではなく、日常の消費研究本といった内容。ものの価値って人それぞれよね、という結論に繋がるのがこの本のタイトル。
最後のほうに、以下の5つの中で、いちばん「笑っちゃう」お金の使い方は?というアンケートの結果とあわせて書かれています。


 ・ボロアパートに住んで、ポルシェを乗り回している
 ・プラスチックの茶碗で、魚沼産コシヒカリを食べている
 ・よれよれのジャージを着て、デザイナーズマンションに住んでいる
 ・シャネルを着て、マクドナルドで食べている
 ・コンビニで買い物した袋を下げて、パークハイアットホテルにチェックインする


この中で一番はじめの項目が圧倒的、という結論に対して、「堅実に資産を形成せず、刹那的に生きるのはどうなのか」という価値観が私たちにはあるらしい、とまとめられているのですが、どうもこの理論はそのほかの例がいけない気がします。
もっと「うーん」と悩むような設問からの分析であれば、もっと掘り下げた理論が展開できたかもしれません。魚沼産コシヒカリが贅沢かと言えば、あきたこまちと1000円違わないこともあるし、ジャージはファッションとして確立されているし、マクドナルドはホットスポットなどもあって単なる安いファーストフード店ではなくなっている。


この本の中でひとつ、うちこも常日頃感じていることが書かれていました。「店頭の商品のすすめ方よりも、通販の情報のほうが優れている状況になっている」といったようなこと。アマゾンのように自動増殖するレビューはここでは置いておいて、私も「時間や文字数が限られている」状況の中で練られた商品のすすめ方のほうが、試着のたびに「お似合いですね!」と言われる実店舗での買い物よりも納得した消費に繋がると思うので。
言葉や文章でなくても、商品や取り扱いブランドを一覧したときに、その店のポリシーやセンスも伝わってきやすい。そんな良さが、通販(おもにネットショッピングですが)にはあると思います。


これは、仕事の実体験からですが、たとえば母の日のプレゼントをおすすめするシーンでは、「こんなにこだわりのある、美しくセンスの光る商品ですよ」とすすめるよりも、「箱を空けた瞬間にぱっと華やいで、思わずお母さんの笑顔がこぼれます」という文章のほうが反応がいい。「贈られた人の喜び」に対して買う人がお金を使いたいと思っている状況では、後者が適切なのでしょう。
このテの本は、どうしても職業柄「仕掛ける側の視点」で読むことになるのですが、この本については消費する側で読める人のほうが面白く読めただろうな。