うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

解夏 さだまさし著

今日読み終えました。「精霊流し」を読んだ人は身近にあまりいませんでしたが、この本はけっこう身近に読んだことのある人がいます。短編4話の小説ですが、表題の1話目「解夏」は最近EXILEのメンバーが告白したベーチェット病という目の難病を抱えた主人公のお話。映画化もされました。
このほかに「秋桜(あきざくら)」「水底の村」「サクラサク」の3話が収められていますが、どのお話も涙なしには読めないものでした。特に今の私には、老いがテーマの「サクラサク」が身近なことに感じました。この小説を通してすごく感じたのは、まっさんは「人生の不安とやさしさを暖かく描く技術がすばらしい」ということ。私などまだまだ人生の折り返し地点も過ぎていないような年齢ですが、主人公ではない周りの人の描写から、その情景の一員になったような想像で自分を重ね合わせずには読めません。
もうひとつ思ったことは、「景色と心情の重ね方の巧みさ」。「解夏」のなかに、こんな表現が出てきます。(以下引用)

町が狭くなった、と思う。
ここから長崎港を見下す風景は見るたびにビルによって埋め立てられていく。
土地が少ないのだから・・・そう呟きかけ、まるで俺の視界のようだな、と思った。

ほかにも、ずっと心にメモしておきたくなるようなせつない表現がいっぱい出てきます。たくさんの人に支持される理由に納得。あとがきに、「精霊流し」の歌詞を引用した解説がありますが、あらためて「まっさんのことば」のとりこになりました。

解夏
解夏さだ まさし

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