うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

精霊流し さだまさし著

帰省中に読み終えた本です。自伝的小説でどこまでフィクションなのかわかりませんが、トークライブのCDにあった話もでてくるので、実エピソードも多いことでしょう。「さだまさし」という人について、去年の日記に書きましたがなぜか同時多発的に身近な人がまっさんの話をするタイミングがあって、なんだか興味がわいて、彼の文章の世界、ストーリーテラーとしての才能に引き込まれ(音楽は洋楽ばかり聴いているので)、この本にたどりつきました。
この本は、別に「さだまさし」という人に興味がなくても小説として、日本人なら読んでみたらいいと思います。長崎の、「原爆」を想像するために。この小説には主人公といろいろな人との出会いと別れが描かれていて、それは原爆に関係ないものがほとんどですが、いちばん印象に残ったのは「登美子おばさん」の言葉でした。膀胱癌からはじまり、「これほどの多臓器に転移するのは、確率的に医学的にはそうありえない。やはり被爆との関連があるのではないか」と医者が言ったという、被爆者のおばさんの言葉。(以下引用)
『戦争やもん。仕方がないのよ。日本が先に原爆ばつくっとったら、他の国の誰かが私と同じ目に遭うとうたやろ? 戦争って、そうゆうもんやろ。(中略)人の心はね、そげんたい。弓の次は鉄砲、その次は大砲、爆弾、原爆。私はそんな恐ろしいものを次から次にどんどん考えつく心が自分にもある、と思ったら、その方が怖い』
この部分に、足ることを知らない人の心や身勝手さ、自分にもあるそうゆう部分を重ねて、複雑に胸に沁みました。自分が誰かの身代り的に何かを行うとき、「なんでこの状況で人にパスできるの?」という怒りと、逆に「自分が受け取らなければ他の人のところへ行くが、それでいいのだろうか」と両方の気持ちが生まれます。そのたびに、いつも後者の気持ちを大切にするようにしていますが、そんな日常の些細なレベルではなく、戦争と向き合った人のなかにこんな気持ちを持っている人がいたかと思うと、日本という国に生まれた人間として、この本を読んでよかったな、としみじみ思いました。
★写真は、長崎の「精霊流し」の模様

ちなみにこの小説はお正月に読みましたが、大晦日の紅白の後にNHKで放送していた「年の初めはさだまさし」。もちろん見てしまったわけですが、「NHKですけどやります」といって演奏した「北の国から」よかったです。沁みました。年明けに出勤したら、「あれみた?なんかあんまり『さだまさし』の話されるもんだから、見ちゃったよ。よかった。メールしようかと思った」なんていうおちゃめな同僚が。今いる環境も、なかなか捨てたもんじゃない。

精霊流し
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