うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ヨーガに生きる ― 中村天風とカリアッパ師の歩み おおいみつる 著

中村天風という人をまったく知らなかったのですが、この人の本が好きな友人がいて、貸してくれました。
「すべてのヨガ仲間に読ませたい」一冊です。一刻も早く読んだほうがいいですこれ。それから、もうひとつ「体に不調を抱えているすべての人にも読ませたい」。読めばわかります。

著者は、中村天風氏の弟子の大井満さん。師匠の体験を小説にした形です。
書き足りないことが山とあることは容易に想像できつつ、雰囲気も章の区切りも時間の往来も、非常に読みやすい小説にまとまっています。
よく呼吸を満たして止める状態のことを「クンバカ」「クンバク」などと表現されていますが、その状態を広く、より深く知ることができてよかったです。この本では、「クンバハカ」(ハは小さい)と記載されています。
どの章にも心に刻まれる貴重な体験が記述されているのですが、なかでひとつ引用するなら、一度死んだ状態から8日後に蘇生する行を成し遂げたヨギの逸話「生命の復活」の章で、自分が悟ったことを人に教えることについて書かれているのですが、
その一部(以下引用)

砂糖は甘い、これは誰にでも通ずる。だが、砂糖を舐めたことのない人間に、その甘さなるものを説けるかどうか。生来の盲人に、赤とか青とかいう色をどうやって説明したら説けるのか。こう考えていくと、日常、言葉や文字でたいていのことは伝わっていると考えているのだが、そこには案外甘さがあると思い至るのである。
(中略)
このような日常生活における簡単な事柄ですらそうなのであるから、これが理性を超えた行の内容ともなれば、その一部を感じたまま文字や言葉に託すことはできても、そのすべてを伝えるなどということはとうていできることではない。むしろ、盲人に象の尻尾をつかませて、これが象だよ、と思い込ませることになりかねない。

ここに思うものが多くありました。
わたしのヨガの先生(インド人)は、ヨガの教えかたがとってもシンプル。5歳からヨガをしていてもう60歳くらいなので、わたしには計り知れないほどの「気づき」があったと思います。多くの生徒さんと接してきたのだから、どうしたら短絡的にモチベーションがあがるなんてこともわかっているのです。でも、いまだにいたってシンプル。
なんとなく感じてはいたのですが、いざ文章で読んでみて、先生のポリシーはこれか!とハッとさせられました。象の尻尾をつかませて、象と思わせてはいけない。ただ、やるのみ。「やるか死ぬかネ!」という先生の口癖の意味が、少し見えてきたように思います。


ヨーガに生きる―中村天風とカリアッパ師の歩み
おおい みつる
春秋社
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