うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

読んだ本

水仙/白鷺 林芙美子 著

自分の人生に起こった重い話って、みんなどうやって消化しているのだろうと疑問に思うことがある。 その時はじっと耐え、時間薬が効いた後には話すのもつらい見るのもつらい。だから人は本を読むのか。 わたしの周囲で林芙美子の作品を好んで読む(あるいは…

台湾はおばちゃんで回ってる?! 近藤弥生子 著

先日、少し遠くに住む友人に会いに行ってきました。 そのご夫婦はまだ一歳に満たない赤ちゃんを連れてインドへ旅行に行きたいと言っていて、だよねだよねあの国ならいけるよねと話をしました。 この本を読んだら、どうやら台湾もそれができそうな社会みたい…

晩菊/水仙/白鷺/松葉牡丹/牛肉/骨(講談社文芸文庫)林芙美子 著

昭和23年・24年に書かれた複数の短編が集まった本を読みました。 『晩菊』だけはこれまで三度ほど繰り返し青空文庫で読んでいました。 著者は昭和24年に長編『浮雲』を発表した二ヶ月後に47歳で亡くなっていて、この本にはその直前に書かれた短編が収められ…

タイ式 矢﨑葉子 著

今回の旅行でタイの国内の差を見ていろいろ知りたくなり、1998年のこの本を読んでみました。 面白いです。タイのリゾート地で現地の若者が身近な人の成功を見て感化され、流れに呑まれていく物語。著者が実際に登場人物たちと過ごしながら見てきたことが書か…

フランス人は10着しか服を持たない ジェニファー・L・スコット著/神崎朗子 訳

売れている本には理由があるのだろうから目につくものは読んでみようと、シリーズすべてを読みました。 15カ国で翻訳されたなかで特に日本で売れたというのが、これまた気になって。 この本は文庫を手にしたら手元に置いておきたくなるイラストと飾り文字の…

こちらあみ子 今村夏子 著/森井勇佑 脚本・監督

友人の勧めで小説を読みました。 ちょうど少し前から黒柳徹子さんのエッセイ『小さいときから考えてきたこと』を読んでいて、わたしは『窓際のトットちゃん』(1981年)を読んだことがないのだけど、あの本がベストセラーになった後のことをそのエッセイで知…

秘祭  石原慎太郎 著

日本の南国の話です。タイ旅行中に、暑い日に読みました。 この物語の世界観とタイで時折見かける裏の一面が妙に重なって感じられて、どんどん読ませる村社会心理サスペンスの世界に没入しました。 ここでは、そういうことになっている。 ここで一般論を持ち…

死の壁  養老孟司 著

帯に「死について考えておくと安心して生きられます。」とありました。 わたしは死を思うときに「わたしが死んでもわたしは困らない」という考えがあるので深く考えることがないのですが(悩んだり苦しむのは生きているから、と考えています)、その時間軸を…

「宗教詩ビージャク」収録のサーキー カビールの詩/橋本泰元(訳注)

この本の電子書籍を買ったのが2020年の9月。自粛型の生活に慣れてきた頃だったかな。 それからずっと、この本のカビールの詩を写経していました。毎日ではなく約2年くらいかけて、あき時間を使ってノートに書き写しました。 カビールの詩にはインドのヨガを…

Chatter(チャッター) 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法  イーサン・クロス著/鬼澤忍(翻訳)

エビデンスは注釈にまとめ、語り口は調査ベースのエッセイ。ここ数年でこういう本が増えていますね。たくさん翻訳されるようになったのでしょうか。 この本は冒頭のつかみのエピソードが、大学教授である自身へ向けられた脅しをきっかけに自分の中のchatter…

マッサージ・ガール ― タイの経済開発と社会 パスク・ポンパイチット著/田中紀子(翻訳)

外国を旅すると、この状況を地元の人はどう捉えているのだろうというものを目にします。 視覚だけでの印象でいえば牧歌的ともいえる道の、昭和終盤の商店のような佇まいのマッサージ店に「NO SEX」と手書きで書かれた貼り紙が残っていました。 わたしは東京…

ばにらさま 山本文緒 著

先日、友人と初詣に行ったらお寺に大黒様が鎮座していて、その姿が似ていたことから『笑ゥせぇるすまん』の話になりました。昔ニュース番組の途中で放送されていた、大人向けのアニメです。「あれ、いま見るとすごいよ」と聞いてあらためて見たら、自分には…

水たまりで息をする 高瀬隼子 著

相手に決めて欲しいときに、グイッと引っ張って欲しいときに、都合よく弱い人のポジションをとりたくなる。そういうときの自分の居心地の悪さをどのくらい認識しているか。 相手が優柔不断。ならば自分で! と、自然に湧き上がってくるわけではない幻の肝っ…

私の作ったお惣菜 宇野千代 著

友人からの冬の便りに、この本が添えられていました。なんてすてきな贈り物。 電子レンジが出てこないので、うちのシンプルな台所でも作れるものばかりです。 コロナ禍以降の数年で、親しい人から「料理の話を自然にするようになってる」と言われる機会が増…

地政学入門 佐藤優 著

ウクライナとロシアの戦争が始まってから、ロシアやグルジアを旅してきた友人と話すたびに、土地勘があると情報の認識のしかたがこんなにも違うのか、これじゃあニュースを見てもついていけないわけだと思ったことが何度かありました。 この本は2015年・2016…

それでも日々はつづくから 燃え殻 著

この人のエッセイが好きだという感覚は、なかなか言葉にしにくいもの。内緒にしておきたくなるタイプの感情です。 小説も読んだけどやっぱり仕事のモヤモヤを書いたエッセイがよくて、微妙な喩えがおもしろい。同じような話を他で読んだなと思っても、なんか…

あのこは貴族 山内マリコ 著

先に映画を4回観て30回くらい泣き済み。だから答え合わせくらいの気持ちで読んだのだけど、原作はこれはこれで、別の部分でグワッとくるところがありました。 あとで小説を読んで映画版のすばらしさに気づく、ここまでの経験は初めて。 小説で "女の義理" と…

あすなろ物語 井上靖 著

友人にすすめられて読んだ『しろばんば』がおもしろくて、その前に書かれた『あすなろ物語』を読みました。 発表されたのは『あすなろ物語』のほうが先なのだけど、『しろばんば』のあの少年が13歳になっていて、その後就職して結婚する頃までの人生のダイジ…

無人島のふたり 山本文緒 著

人間の性(さが)について避けられないところが書かれていました。 初回は著者の最期の言葉にたどり着くことをつい追ってしまったので、数日おいて二回読みました。 山本文緒さんが亡くなったというニュースを見たとき、やっとこの作家の作品の刺激について…

未完の肖像 アガサ・クリスティー著 / 中村妙子(翻訳)

30代終盤の傷ついた女性の自分語り。 一晩がかりでこれに付き合ってくれる人がいるとしたら、それは地蔵。 名古屋駅の近くで、愚痴聞き地蔵ってのを見たことがある。 そんな愚痴聞き地蔵ごっこも、小説ならば実現可能。 読んでいるわたしが地蔵になって話を…

しろばんば 井上靖 著

静岡県伊豆半島のお話です。視点をすっかり子供の位置に持って行かれ、天城から豊橋の距離が日本からアメリカくらいに感じられて、旅の様子にドキドキします。 隣県が他国のように感じるスケールで暮らしていた頃の出来事が、感受性の畑に感情の種を蒔く。思…

「私」という男の生涯 石原慎太郎 著

ページをめくるたびに溢れ出る自慢話と回想録。 その人が生きていた頃の印象が残っているうちに本人が書き残したものを読もうと思って読んだのだけど、この読みの苦しみをどう表していいものか。 友人からも「なぜそれを読むの」と聞かれました。わたしには…

犬のかたちをしているもの 高瀬隼子 著

作為的に考えれば考えるほど、根源的な幸福からは遠ざかる。だから過剰なプランは立てないことだ。── と、そういう感覚をなんとなく行動指針のようにしている。 その指針は、30代前半までのうじゃうじゃを振り返った経験からの学び。 わたしは主人公と同じ境…

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白  小田嶋隆 著

この著者は経験者にこそ語ってほしいことを語ってくれる人かもしれない。 『東京四次元紀行』を読んで安心し、アルコールに関するこの本を読みました。 この種の本は身近な人の怖さを見てきたわたしにとって、要注意のカテゴリです。手を出すのに勇気がいり…

本を読んだら散歩に行こう 村井理子 著

生きているとたくさん、コミュニケーションの後悔をする。 なんであんな言いかたをしたんだろう、とか、なんであそこでずるい質問の形をとってしまったのだろう、とか、個々のパワーバランスを推測せずに雑に人と人を繋ごうとした能天気さとか、そういう後悔…

スピリチュアルズ 「わたし」の謎  橘玲 著

この本で扱われているスピリチュアルは、波動とか風の時代とかではなくて、脳科学の知見でのスピリチュアル。「無意識/魂」の傾向がテーマです。 わたしは都会からさらに都会へ出る日は、こういうビジネス専門誌に連載されていそうな本を読むことがあります…

表面的な苦しみの奥にあるもの。すぐには弱音を吐けない理由(小説『N/A』を読んで考えたこと)

先日読んだ『N/A』という小説のなかで、ひとつ強く印象に残るエピソードがありました。 この小説です。 このお話の中に、ある女子高校生が祖父のコロナ感染を心配し悲しんでいる場面があります。 同級生たちは彼女にどうメッセージを返せばいいのか逡巡し、…

弔辞 ビートたけし 著

先日、日本映画をたくさん観ている人に会えたので、たけし映画のオススメを訊こうと思ったら「わたし、そこ通ってないんですよね。観てないんです」とおっしゃる。 なんかわかる。わたしと同世代でなんとなく避けてきたって人は、けっこういるのかも。 90年…

東京四次元紀行 小田嶋隆 著

仕事中にラジオをつけていると月曜の15時に著者がニュースについて論じるコーナーがあって、興味深く聴いていました。 話題に登場する固有名詞から、自分と自分の親世代の中間くらいの人の意見だとわかる。「ここは昔の価値観を残したほうがいいと思っておら…

かくも甘き果実 モニク・トゥルン著/吉田恭子(翻訳)

こういうのを歴史小説というの? 驚きのおもしろさで、わたしにとってはサスペンスでもありました。 語り手の独白にどんどん引き込まれます。ああそうか、この人が話しているのはラフカディオ・ハーン(日本名:小泉八雲)のことなのね。で、この人は誰に語…