うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

インド思想

インドの哲学体系2 中村元 著(12章:ミーマンサー学派、13章:文法学派)

インドの哲学体系のうち主要な16種類を叙述した概説書『サルヴァダルシャナ・サングラハ(Sarvadarsanasamgraha)』(14世紀、マーダヴァ著)の訳本が2冊構成で出ているうちの、後編の一冊を読みました。後編にはミーマンサー、文法学、サーンキヤ、ヨーガ、ヴ…

聞き書き抄 解説ヨーガ・スートラ 第七講(日本ヨーガ禅道友会)

「第六講」に引き続き、サマーディとサマーパッティのあたりです。 ヨーガスートラの1章17節と連動する42節の有尋定・43節の無尋定の記述は、構成上くっつけておいて欲しい気もするし、「なんでわざわざ三昧を二つに分けてそんなに長く語るのか」という気も…

カルマ・ヨーガ 働きのヨーガ スワミ・ヴィヴェーカーナンダ(再読)

ここ1ヶ月ほど、ギーターについてさまざまな局面での解釈を思いなおしていました。ギーターの解説本の役割も果たすこの書はわたしにとって「ものさし」のような役割をしてくれる本で、以前読んだときにメモしたことまた違う部分が心に刺さっている自分の状況…

ヴェーダーンタ思想の展開 中村元 著

年末は図書館の休館日が長いので、そこを見越して借りてみたのですが、んま〜、濃い内容でした。 ヴェーダーンタ軸(おもにシャンカラ)で他の教義との違いが書かれているので、ヨーガとサーンキヤを別の角度から再認識することができました。 時代感として…

「目的がないから動けない」のではない

「ヴェーダーンタ・サーラ」という15世紀の教典は、サーンキヤもヨーガも取り込めるものは取り込んでいる、かなりおもしろいものなのですが、これを読んでいると夏目漱石の「こころ」の分解描写におののきます。えええまたそっちに持ってくのー? って、もう…

覆蔽力と展現力(「よくない妄想」のヴェーダーンタ式分解)

ヴェーダーンタのマーヤー説のすごいところは、ヴェーダーンタ・サーラの66節の、これに尽きるなぁ、と思う。 この無知にどのような能力(sakti)があるかというと、覆蔽力と展現力との二種類がある。 「ヴェーダーンタ思想の展開(中村元 著)」のなかでこ…

ヴェーダーンタ・サーラ(「ヴェーダーンタ思想の展開」中村元 著」より)

「ヴェーダーンタ思想の展開(中村元 著)」にあった『ヴェーダーンタ・サーラ』を紹介します。 よくいうインド哲学の「哲学」の部分はサンスクリット語だとDarshan「ダルシャン」という単語が使われることが多くて、これは中村先生の説明(P105)によると、…

宝彩有菜のバガヴァッド・ギーター(全巻/Kindle)

瞑想を科学的に指導する人の目線でのギーター解説書。キンドルで見つけたので読んでみました。 著者さんによる解説と、「笑雲(先生)」「小松茸(弟子)」の対話仕立ての構成で、バガヴァッド・ギーターのなかの瞑想の修行に関する部分のみを抜き出して解説…

ヨガの封建制度(「ヴェーダーンタ思想の展開」より)

ヨーガを思想も含めて学ぶようになればなるほど、おもしろくなる封建制度的な師弟関係の話。 「師弟関係」は、昔は太かったのが段々薄くなって、でもすごく大事なんだよ。という理解がほとんどだと思うのですが、この「忠誠」ノリは、普通に古典を読むとヨー…

聞き書き抄 解説ヨーガ・スートラ 第六講(日本ヨーガ禅道友会)

第五講で「瞑想」の説明に入っていますが、第五講では1章17・18節と42節以降がリンクする有定無定のあたりを掘り下げています。だいたいどこでもヨーガ・スートラの講義のメインイベントになるであろう、このあたりですが ここでまたサマーディとあってね、…

神の詩 バガヴァッド・ギーター 田中嫺玉 著

まるで「フランダースの犬」を見ているかのような気分になる訳。これは手元においておきたくなる。 我が家にはここで紹介したことのある「上村勝彦訳版」「バラモン教典の収録版」のほかに、バクティ・ヴェーダーンタ版など5冊のギーターがあるのですが、こ…

聞き書き抄 解説ヨーガ・スートラ 第五講(日本ヨーガ禅道友会)

しばらくサーンキヤがマイ・ブームになってしまい、こちらのほうは半年振りになりますが、「第一講」「第二講」「第三講」「第四講」に続いて、第五講からの紹介です。ここは三・一からの「瞑想」について掘り下げます。池田書店版の「ヨーガ入門」にあった…

Samkhya Darshan / Swami Niranjanananda Saraswati 著

英文の本で、巻末付録にイーシュヴァラクリシュナのサーンキヤ・カーリカーが収録されています。 さきに巻末の教典を私訳してから前段の解説部を読みましたが、英語辞書とサンスクリット語辞書を参照しながらだったので、読了に1年かかりました。 わたしはヨ…

バガヴァッド・ギーターのiPhoneアプリ

バガヴァッド・ギーターはヒンドゥーなインド人にとっては聖書のような存在。 ヨーガの聖典はヨーガ・スートラなんでしょ、と思われるかもしれませんが、ヨーガ・スートラ(以後「Y.S.」)は時代的に仏教をはじめとするインド哲学の面々が悟りと解脱について…

夏目漱石とパタンジャリ

わたくしただいま、空前の夏目漱石ブームのなかにおります。 理由はいくつもあったのですが、それはいずれ本の感想に書くとして、夏目漱石って千円札以外にどんなイメージがあったっけ。 わたしの印象は学校の教科書で読んだ「こころ」で、「なんでこんなに…

バラモン教典 原始仏典(サーンキャ・カーリカー、ヨーガ・スートラほか)

世界の名著 (1) という中央公論社のシリーズ書籍。わたしは知人のヨガ講師の方からいただいたのですが(感謝)、中古で手に入れることができます。 冒頭に「インド思想の潮流」の解説と、以下の訳が収められています。 ■バラモン教典 ウパニシャッド(有名な…

ヨーガ古典翻訳マラソン。そして空海フィーバー

去年の11月頃からつい最近まで、翻訳作業(英語から日本語)をしていました。 翻訳作業は、日常の合間にちょぼちょぼやって足掛け10ヶ月。ヨーガ周辺の古典を英語版から訳してみました。 訳してみたのは「ゴーラクシャ・シャタカ(GS)」「ハタ・ヨーガ・プラ…

サーンキャ二元論への、H・V・ギュンター博士による鮮やかな指摘

ヨーガの哲学を学んでいるともれなくついてくるサーンキャ哲学ですが、かねてより「なんかヘン」と思っているところがありました。自分で説明をするときには、あえてマイトロジカルな要素や「男性原理と女性原理」の説明のいらない喩えを用いてきたのですが…

マリー・アントワネットのようなインド思想もある

マリー・アントワネットが「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」と、本当に言ったかどうか知らないのですが、インド思想の中にもこれと似たノリの思想があります。 お金がないなら、借りたらいいじゃない♪ わたしこれ、けっこう好きなんです。わた…

アシュタンガ・ヨーガインターミディエート・シリーズ ― 神話・解剖学・実践 グレゴール・メーレ 著(GAIA BOOKS)

ヨーガ全般の復習を兼ねて、ガイアブックスの本を何冊か立て続けに読んでみたのですが、この本は「アシュタンガ・ヨーガ 実践と研究」の続編で、アーサナの説明はよくセカンド・シリーズといわれているものです。 前編にくらべて神話学がとても充実していま…

バートン版 カーマ・スートラ ヴァーツヤーヤナ(著)/大場正史(翻訳)

ヨーガ・スートラが「心身の浄化と解脱と悟りと神通力の要件定義書」であるのに対し、これは「恋愛と結婚と性愛と大人の恋の要件定義書」。細かい状況別の章句が盛りだくさんなスートラです。 第二部の「性的結合について」の記述がすごいということで有名で…

なぜ数字が苦手、ということになるのか

たまに「わたしはパソコンや数字が苦手! うちこちゃんは、そういうの得意だよね」とヨガ友に言われます。 でもそう言う人たちはそれを補うバランス感覚を持っているので、わたしがむずかしそう、面倒くさそうと感じることをサッとやっている。 得手不得手と…

ゲーランダ・サンヒターとパラッパラッパー

11世紀から18世紀までに書かれたハタ・ヨーガの古典に有名なものがいくつかあるのですが、わたしは「設定」を含めて弟子気分で楽しみます。 今日は有名どころで ゴーラクシャ・シャタカ(G.S.) ハタ・ヨーガ・プラディー・ピカー(H.P.) ゲーランダ・サンヒタ…

空海さんの顕教密教解説とバガヴァッド・ギーター

ヨーガの歴史や思想の研究をすると、結局いつも「空海さん、キャー☆」ということになってしまう。 ヨーガの古典を読めば読むほど、特に11世紀以降のハタ・ヨーガの書物は「あ、これ即身成仏義にあるやつだ」とか、「般若心経秘鍵にあったのと同じニュアンス…

タクァンジャリの太刀ヨーガ・スートラ(不動智神妙録「心の置所」「本心妄心」)

日本人がヨーガ・スートラを読むとき、瞑想の経験があっても、八肢の凝念と静慮は難しく感じると思います。この部分のパタンジャリさんのお話は、澤庵宗彭の説いた「剣禅一味」とよく似ています。ということで、「不動智神妙録」のご紹介。 沢庵和尚は徳川時…

聞き書き抄 解説ヨーガ・スートラ 第四講(日本ヨーガ禅道友会)

「第一講」「第二講」「第三講」に続いて、第四講からの紹介です。 二・六四以降のことについて話されているので、プラーナヤーマ(調息)とプラティヤーハーラ(制感)に関する話題です。 <195ページより> プラーナっていうのは、便宜上、「呼気」と息を…

オロオロする男子へのソリューション提案がどうにもおかしい

パタンジャリの中の人がヨーガ・スートラで「霊的な書物を研究せいよー(2章1節)」とおっしゃるので、いちおうわたしも読んでみたりするんですが、どうにも神妙な気持ちになれないときがある。 そういうネタをあげだすときりがなく、以前は「これはどうした…

否定的想念、行為への対処法

インド思想・比較宗教の講座の準備を兼ねて、いろいろな聖典のなかでも楽しく読めそうなところを再確認しています。わたしはこの作業が大好きで、過去に自分が貼った付箋のコメントを見ては「なるほどー」と当時の感覚を思い出しています。 今日はコーラン下…

インドと日本の悪人正機説

バガヴァッド・ギーターも歎異抄も「悪人正機」を説いています。両方とも好きなわたしは、どっちをベースにして話すか迷うのもまた楽しみというくらい、この2冊が大好き(両方とも仲良く18章構成)。 親鸞(&唯円)の悪人正機は、もともと法然の問答にも書…

プールナマダと明恵上人と田原坊

平和のマントラとして知られるプールナマダ(POORNAMADAH)を唱えていると、連想ゲームのように頭に浮かぶ句があります。このマントラは「足るを知る」という言葉をすぐに想起させる。 poorna「満ちる」の状態をあらわす言葉をベースに構成されていて、覚えや…