うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

インド思想

「アルタ・サングラハ」(バラモンの精神界 インド六派哲学の教典 より)

中村元先生の選集「ミーマンサーと文法学の思想 インド六派哲学」を立ち読みしてみたら壮大すぎて、こりゃ根本経典のほうで語彙のトーンをつかんでおいたほうがいいかなと思って探したのですが、「ミーマーンサー・スートラ」のズバッとした日本語訳が見つか…

バラモンの精神界 ─ インド六派哲学の教典 訳・解説 湯田豊

インド六派哲学は、わたしの脳みそのレベルではあと5輪廻くらいしないと学べそうにない深遠な世界。 ヨーガに近いところから、サーンキヤ、ヴェーダーンタ、ニヤーヤ、ヴァイシェーシカと見てきて、やっとミーマーンサーまできたぞというところで中村元先生…

おかいものインド哲学

ベトナムにいる間に「買い物」に対してポジティブになるという心情変化があり、それがとてもおもしろかったので、今日は買い物とお金を題材にインド哲学しちゃいますよ。 ベトナムのホーチミンにある このお店で ワンピースひとつ、マフラーひとつ、ヘアバン…

アタルヴァ・ヴェーダ讃歌 ― 古代インドの呪法 辻直四郎 訳

4ヴェーダのひとつですが、まえがきに「リグ・ヴェーダ讃歌」ならびに「インド文明の曙」を参考とされんことをお勧めする、とあります。 読んでみるとそりゃそうだという内容で「呪法」特有のびっくり項目は数知れずという感じですが、「恋仇の女子を詛うた…

ダルマキールティの論理学(中村元 選集25「ニヤーヤとヴァイシェーシカの思想」より)

先日の感想にも書きましたが、この本はもともと「ヴァイシェーシカ・スートラ」を読むために手にし、ニヤーヤに触れるのはもっと後(来年とかさ来年とか)にしようと思っていました。ニヤーヤ学派の論証学は、まえに中央公論社が出している「バラモン教典」…

ニヤーヤとヴァイシェーシカの思想 中村元 著

ヨーガ・スートラの第1章6節・7節、サーンキヤ・カーリカーの4節〜6節に出てくる「pramana」について参照したくて読みました。まずは「ヴァイシェーシカ・スートラ」だけにしておくつもりが「ニヤーヤ・スートラ」にもハマってしまい、さらには毎度のことな…

インド思想は「トレンド観」で学ぼう

わたしはヨーガ周辺の歴史を学びながら、よく妄想します。4〜5世紀頃のヒンドゥー・バラモンさんたちは仏教に対して「やべー。あいつら瞑想を開発してこんな細かいところまで観えてるうえに、現世にも寄り添ってる。やばいやばいやばい」って、焦っていたん…

インド哲学の教室 ― 哲学することの試み 宮元啓一 著

インド六派哲学の「自己」の設定を対話形式の講義録を読むかたち(架空の授業)でまとめられています。 授業は「自己と世界」「ことばと世界」「哲学の目的としての絶対的幸福」の3つですが、最後の章の副題が「人情を超えて」となっており、そのなかの小さ…

バガヴァッド・ギーター(Bhagavad Gita)

よく「どの本を買ったらいいですか?」という質問を受けるので、その回答の背景説明を兼ねて、過去に紹介したことのある本の特徴を書きます。 質問には はじめは「へぇ。インドにはこういう聖書みたいなのがあるのね」という入りかたでしょうから、ならば「…

表現と文意と細部の意味(「チャラカ・サンヒター」第30章16節〜19節より)

わたしはここ2年くらい、サーンキヤの主張に軸足を置いてヨーガを含めたインド哲学を学ぶという勉強法をとっています。 そのスタンスで昨年は「ヴェーダーンタ・サーラ」、今年は「チャラカ・サンヒター」に触れてみて、たいへん刺戟を受けました。今年はも…

アーユルヴェーダ医師の学習伝授規定とサハナー・ヴァヴァトゥ

「チャラカ・サンヒター」を読んでいたら、ヨーガの定番マントラ「Sahana Vavatu」の意味の背景をよくあらわしている箇所があったので紹介します。 「チャラカ・サンヒター」第三巻八章の前半は医者の倫理に関することが詳しく述べられ、後半は「論議道」(v…

「チャラカ・サンヒター」第25章の冒頭が傑作すぎる

先日紹介した「チャラカ・サンヒター」第25章『人間と病気の由来についての章』の冒頭をご紹介します。 「チャラカ・サンヒター」というのは、インドの医学をまったく知らない人にもわかるように要約すると、日本の感覚でいう「発熱したらお尻に長ネギを」「…

インド医学概論 ― チャラカ・サンヒター 矢野道雄 訳・解説

アーユルヴェーダの古典医学書「チャラカ・サンヒター」の訳と解説の本です。もうひとつ有名な「スシュルタ・サンヒター」というのがあり、こちらは外科的治療法についても詳しく述べているそうですが、「チャラカ・サンヒター」は外科にはほとんどふれてい…

文と質の論争 釈道安の仏典翻訳論「五失本三不易」

先日、仏典漢訳の世界で釈道安(312〜385)というかたが残した「五失本三不易」という翻訳論の存在を知りました。 釈道安さんご本人は訳者ではなく漢訳事業を助けた人だそうで、中国仏教の基礎を築き、「鳩摩羅什を中国に招くよう、苻堅に建言した」と Wikip…

天職って? svadharma と svakarma

以前「svadharmaのみつけかた(実例ベース)」という、生ブログから派生したエピソードを書きましたが、今日はもう少し本来の語の意味に沿って書きます。 わたしが気まぐれに開催しているバガヴァッド・ギーターの勉強会は、参加者がセレクトした節について…

聞き書き抄 解説ヨーガ・スートラ 第十講(日本ヨーガ禅道友会)

これで最終講。「行」「超能力」「解脱の条件」を題材にお話をされています。 「超能力」のところでは出口王仁三郎さんの事例などが出てきて、時代だわ〜という感じがします。 ヨーガはヨーガ・スートラ内のトンデモ・パート(第3章16節以降)の存在によって…

聞き書き抄 解説ヨーガ・スートラ 第九講(日本ヨーガ禅道友会)

第八講以降は心理学的な側面からいくつかトピックを抜き出して語られていて、第九項では智や煩悩に関するワードを掘り下げる内容になっています。神との関係の間にあるのが「愛」か「智」かといったような説明で、比較にキリスト教がよく引き合いに出されて…

svadharmaのみつけかた(実例ベース)

関西のギーター読書会で解説が svadharma に及んだときに「そう! わたし、この svadharma が知りたくて……。これさえわかれば、と思うんです。ヨガの先生に聞いても "観察するしかありません" といわれて……」という質問を受けて、わたしの回答もその先生の回…

ギーター文体とジッタリンジンとさだまさし

日本の言語はとても特殊。これはインド思想を学ぶうえで、早めに知っておくとよい。 言語は身体から出るものなので、けっこう根深い相違点なのだけど、ここを理解すると格段に親しみやすくなります。 具体的には中村元先生の以下の解説のとおりなのですが、…

バガヴァッド・ギーター (インド古典叢書) 辻直四郎 著

以前から辻先生バージョンは最後に読もうと決めていました。 辻直四郎:1899年11月18日 - 1979年9月24日 鎧淳:1930年 - ? 上村勝彦:1944年3月 - 2003年1月24日 という順番なので。 以下のかたはもともと学者さんではなく、いうなれば「ハンパなくすごい主…

バガヴァッド・ギーター 鎧淳 訳

はじめに端的に感想を書くと、人気の田中嫺玉さんが俵万智だとしたら、鎧先生は松尾芭蕉です。「兵・精兵(つわもの)」という表現がいっぱい出てくるので、毎度「出た! 芭蕉」と思いながら読んでいたら楽しくなってしまいました。「対立の惑い」なんて表現…

イラッときたら、サーンキヤ

ある日のこと。漱石グルジの小説を愛する人たちとの談話の中で、カントの哲学を愛好している人のなにげないひと言に、サーンキャ哲学との共通点を感じました。 最近の日本語にも、主体の責任を負わない表現が増えてきましたね。「イライラする」も「イラッと…

インドの「二元論哲学」を読む ― イーシュヴァラクリシュナ『サーンキヤ・カーリカー』 宮元啓一 著

サーンキヤ学派の代表的教典「サーンキヤ・カーリカー」の日本語版解説書です。手に入りやすいものだと、このほかには「バラモン教典」に収録されたものがあります。注釈書というのは表面的な文面での「わかりやすい」「わかりにくい」で語るものではないし…

なぜインド哲学をむずかしいと感じるのか

インドの哲学やヨーガの思想を学んでいると、じわじわ見えてくることがあります。この学問特有の雰囲気なのですが、これはとても説明がむずかしい。日本には註解を重ねていくコメンタリー文化が定着していないので、たとえが見つからない。日本の有名な書で…

聖書の「伝道の書」がローカーヤタ派っぽくておもしろい

記事のカテゴリが「インド思想」になっていますが、聖書の話です。 「日本人は知らなすぎる 聖書の常識」のなかに「リアリズムに満ちた伝道の書」という章があり、ここにあった内容がかなりおもしろい。 富、政治、正義、知識。どれにも期待せずバッサバッサ…

三つの苦しみ

夏目漱石の小説「草枕」の冒頭に、こんな有名なフレーズがあります。 智に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。 夏目漱石はインドのサーンキヤ学派の「三苦」の影響を受けていたという説がある…

聞き書き抄 解説ヨーガ・スートラ 第八講(日本ヨーガ禅道友会)

第七講まではサマーディとサマーパッティの話でしたが、ここからサーンキヤの背景を踏まえた心理学の部分に入っていきます。佐保田先生はサーンキヤを「すうろん(数論)」と口語で話されていたようです。とても家庭的な喩えが特徴で、プルシャとプラクリテ…

シュリーマッド・バガヴァッド・ギーター 日本ヴェーダーンタ協会

こちらのギーターは歌会や暗唱会向きで カタカナ音表記 日本語訳 アルファベット表記 が記載されています。 田中燗玉さんの訳(神の詩)を下敷きにしつつも、たとえば4章22節では田中燗玉さん版が冒頭を「無理なく入ってくるもので満足し」としているところ…

日本の「良心」は「呵責」するのふしぎー!

よく日本語の不思議について外国人目線で書いていますが、わたしは日本人です(笑)。 日本人なのですが、インドのざまざまな教義の表現に触れていると、やはり日常の日本語には独特の縛りがあると感じます。 頭がインド・モードのまま聞くと、「良心の呵責…

インドの哲学体系2 中村元 著(14章サーンキヤ、15章ヨーガ、16章シャンカラ学派)

先日紹介した本の続きです。サーンキヤとヨーガはもともと少し学んでいたので、それをヴェーダーンタの学者さんの視点で解説されているのがすごくおもしろかった。まあだいたい註解書を読んでいる間は著者に恋するわたしなので「マーダヴァさん、頭よすぎ。…